【地方公務員懲戒事件:地方公務員が飲酒運転をして軽微な物損事故を起こした事件】

最高裁判所第一小法廷 令和4(行ヒ)319 懲戒処分等取消請求事件 令和6年6月27日 判決(破棄自判) 原審  大阪高等裁判所


1 ポイントは何か?


  懲戒処分の濫用の有無


2 何があったか?


  Aは、O市の職員であるが、飲酒運転をし、軽微な物損事故を起こしたが、翌朝まで警察に届けず、事故を起こしたのは朝のことだと嘘をついた。O市長は、Aを懲戒免職処分にした上で退職金全部支給制限処分をした。
  Sは、O市長を被告として、両処分をいずれも取消すよう求めた。


3 裁判所は何を認めたか?


  大阪地裁は、懲戒免職はA敗訴、退職金全部支給制限はAが一部勝訴。
退職金については賃金の後払いの性質や勤務の功績を評価し、相当額の減額にとどめるべきであるとした。
Oが控訴するも大阪高裁ではO敗訴。Oが上告。
最高裁判所は、大阪高裁のO敗訴部分を破棄し、同部分の大阪地裁判決を取消し、同部分のAの請求を棄却した(破棄自判)。
その結果、Aが全部敗訴。
しかし、裁判官岡正晶の反対意見があり、大阪地裁及び大阪高裁の判決を支持し、退職金全部支給制限処分は社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものとして違法であるとして、Oの上告を棄却するよう主張した。


4 コメント


  飲酒運転は、大事故の危険性があるので、刑事事件においては厳しく処罰すべきである。しかし、懲戒免職処分は、Aの飲酒運転は深夜の交通量が相当少ない時間帯であり、物損事故も軽微なものにすぎないことから、相当ではないと考える。Aが十分に反省するならば、救済の余地を残すべきである。その場合、退職金支給制限処分については退職する際に改めて検討すべきである。
以上