1 ポイントは何か?
本件は、押船が作業台船を押しながら航行中に、不注意で、漁撈中の漁船に衝突し、漁船の船長を溺死させた事件であり、押船の船長が業務上過失往来妨害罪、業務上過失致死罪で有罪とされた。漁船が漁撈中であったか、事故の主因はいずれにあったかが問題となったが、裁判所は、漁船が漁撈中であり、事故の主因は押船側にあったと認定した。
2 何があったか?
平成12年12月20日午前10時ころ、静岡県沖の海上で、押船が作業台船を押しながら航行中に、漁撈中の漁船に衝突し、漁船は二つに分断破壊され、漁船の船長が溺死した。
検察官は、押船の船長が、目視及びレーダーによる見張り等を厳重に行い、他船との衝突を未然に防止すべき注意義務があったのにこれを怠ったとして業務上過失往来妨害罪、業務上過失致死罪で起訴された。
弁護人は、漁船が漁撈中ではなく、そうであれば主として漁船に押船との衝突を避ける義務があった(海上衝突予防法15条1項)、仮に漁撈中であったとしても、漁船にも衝突を避けるための最善の動作をとるべき義務があった(17条3項)から、事故の主因は漁船にある等主張した。
3 裁判所は何を認めたか?
押船の船長が業務上過失往来妨害罪、業務上過失致死罪で有罪とされ、懲役1年6月、未決勾留日数中160日を本刑に算入する、本判決確定日から4年間刑の執行を猶予するとの判決を受けた。
漁船は漁撈中であったと認定し、漁船にも一定の落ち度はあるが、本件事故の主因は押船の船長の不注意にあるとされた。
4 コメント
本判決文には罰条の項目がない。
業務上過失往来妨害罪は刑法129条1項、2項(3年以下の懲役、50万円以下の罰金)、業務上過失致死罪は同211条(5年以下の懲役もしくは禁固、100万円以下の罰金)。
判例
平成13(わ)190 業務上過失往来妨害等被告
平成14年2月6日 静岡地方裁判所
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