最高裁判所第二小法廷 昭和43(ひ)1 上訴費用補償請求
昭和44年1月25日決定
1 ポイントは何か?
刑事事件の費用負担。
2 何があったか?
八海事件は、3次上告審で原判決を破棄し共犯者とされたABCDを無罪とした
。
ABCDは、国に対し、検察官による第2次上告審で負担させられた費用の補
償を求めた。
3 裁判所は何を認めたか?
Aらの請求を棄却した。
「刑訴法368条(現181条3項)は、検察官のみが上訴をした場合におい
て、上訴が棄却され、または取り下げられる等、上訴が不当であつたことが判
明したときに、当該審級の裁判所が、被告人に対し、その審級において生じた
費用を補償することを認めた規定であって、所論のごとく、検察官の上訴によ
り破棄し差し戻されたその後の審級において、検察官の主張が窮極において否
定されたという本件のような場合にまで適用されるものではない」
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現181条3項但書の趣旨からみれば、無罪となった被告人に責めに帰すべき
事由がなければ、本件の第2次検察官上訴事件の費用負担は回復されるべきで
はないか。
(参考刑事訴訟法現規定)
「第15章 訴訟費用、第181条③ 検察官のみが上訴を申し立てた場合におい
て、上訴が棄却されたとき、又は上訴の取下げがあつたときは、上訴に関する
訴訟費用は、これを被告人に負担させることができない。ただし、被告人の責
めに帰すべき事由によって生じた費用については、この限りでない。」以上