最高裁判所第三小法廷 昭和30(し)37 背任被疑事件につきなした勾留処分の準抗告棄
却決定に対する特別抗告 昭和30年12月26日棄却決定(原審、岡山地方裁判所)
1 ポイントは何か?
➀特別抗告適法の事由、
➁原審において主張も判断もなされなかつた事由の特別抗告における主張
➂迅速な裁判を受ける権利
2 何があったか?
Aは、
昭和30年8月18日背任被疑者として逮捕状により逮捕され、
同月20日勾留状発布、
同月23日準抗告、
同月26日勾留理由開示公判・勾留取消請求、
同月29日勾留期間延長・準抗告棄却・勾留取消請求却下、
同年9月8日背任・商法違反により公訴提起、
同月9日保釈許可、釈放された。
3 最高裁判所は何を認めたか?
本件特別抗告を棄却。
「同年8月23日・・・準抗告の申立に対し、同月29日原裁判所がなした右準抗告棄却
決定は、洵に迅速になされたものであること明らか」
4 コメント
Aの弁護人が8月23日に準抗告申立をした時、裁判所は弁護人に対し別途勾留取消請求
をするか尋ねた可能性がある。そして弁護人がそれをすることを予告し、同月26日の勾
留理由開示公判に合わせて勾留取消請求をした可能性がある。裁判所はそれを待って
、29日に勾留期間延長・準抗告棄却・勾留取消請求却下を判断に齟齬がないように同時
に行った可能性がある。もし裁判所が8月23日即日に準抗告を棄却していれば、弁護人
は早ければ即日特別抗告ができたであろうが、最高裁の判断には3か月近くかかるので、
いずれにしても同月29日の勾留期間の延長や9月8日の公訴提起には間に合わなかっ
たであろう。しかし、特別抗告の理由として、迅速な裁判を問題にしたことは、無意味で
はなかっただろう。