【非公開の事件:遺産分割調停、審判は公開法廷の対審によって行われる必要はないとされた事件】 

1 ポイントは何か?

  相続権、相続財産の存在を公開、対審の訴訟手続きで争うことはできるが、審判手続きで前提として決することもできる。

2 何があったか?

  遺産分割調停が申し立てられた。

3 裁判所は何を認めたか?

  調停不調後、非公開、非対審の審判が下された。

  相続権や相続財産の存否について、公開、対審の素養手続きで争う余地もあった。

「遺産分割の請求、したがって、これに関する審判は、相続権、相続財産等の存在を前提としてなされるものであり、それらはいずれも実体法上の権利関係であるから、その存否を終局的に確定するには、訴訟事項として対審公開の判決手続によらなければならない。しかし、それであるからといって、家庭裁判所は、かかる前提たる法律関係につき当事者間に争があるときは、常に民事訴訟による判 決の確定をまってはじめて遺産分割の審判をなすべきものであるというのではなく、 審判手続において右前提事項の存否を審理判断したうえで分割の処分を行うことは少しも差支えないというべきである。けだし、審判手続においてした右前提事項に関する判断には既判力が生じないから、これを争う当事者は、別に民事訴訟を提起して右前提たる権利関係の確定を求めることをなんら妨げられるものではなく、そして、その結果、判決によって右前提たる権利の存在が否定されれば、分割の審判もその限度において効力を失うに至るものと解されるからである。このように、右前提事項の存否を審判手続によって決定しても、そのことは民事訴訟による通条の裁判を受ける途を閉すことを意味しないから、憲法32条、82条に違反するのではない。」

4 コメント

  審判が確定した場合は、給付内容に債務名義同様の効力が生ずるので、その後に別途の訴訟を提起して相続権や相続財産を争うことはできないと考える。この点、注意すべきである。

判例

昭和39(ク)114  遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する抗告

昭和41年3月2日  最高裁判所大法廷  決定  棄却

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