【年金請求:視力障害者が障害年金と児童扶養手当の併給を求めた事件】

1 ポイントは何か?

  本件は、視力障碍者が障害年金と児童扶養手当の併給を求めて却下され争った事件であり、裁判所は児童扶養手当法43条3項2号(昭和48年法律で廃止)の併給調整条項は憲法に違反しないとして視力障害者が敗訴した。

2 何があったか?

  Aは視力障害者で、傷害福祉年金を受給していたが、昭和45年2月、都道府県知事に対しD(昭和30年5月12日生)のための児童扶養手当の受給資格の認定申請をしたところ、児童扶養手当法43条3項2号(昭和48年法律で廃止)の併給調整条項に基づき却下された。

  Aが本却下決定を争い、提訴した。

3 裁判所は何を認めたか?

  A敗訴。

  憲法25条の趣旨による具体的立法措置は立法府の広い裁量にゆだねられており、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ない場合を除き、裁判所が審査判断するに適さない。

児童扶養手当は、もともと国民年金法61条所定の母子福祉年金を補完する制度として設けられたものと見るのを相当とする。社会保障給付の全般的公平を図るため公的年金相互間における併給調整を行うかどうかは、立法府の裁量の範囲に属する事柄と見るべきである。児童扶養手当法43条3項2号(昭和48年法律で廃止)の併給調整条項は憲法25条に違反しない。

4コメント

  昭和48年法律で廃止になる条項をその廃止まで適用するのが妥当かどうかについては、国会でどのように議論がなされたのか。廃止法で、障害年金と児童扶養手当の併用を遡及して可能とする条項を設け、必要な予算措置も講じておくべきであった。

なお、Dは、昭和49年3月31日迄は児童扶養手当法上の「児童」であったから(児童扶養手当法3条1項)、Aは昭和48年廃止法以降それまでは児童扶養手当の支給を受けることができた。

本判例は、最高裁判所令和4(行ツ)275事件で引用された。

判例

昭和51(行ツ)30  行政処分取消等
昭和57年7月7日  最高裁判所大法廷  判決  棄却  大阪高等裁判所