最高裁判所第二小法廷 平成20(受)6 解雇無効確認等請求事件
平成21年10月16日判決、原審東京高等裁判所
1 ポイントは何か?
我が国の裁判権。
2 何があったか?
Aは米国B州の港湾局日本事務所の職員として勤務していたところ、同港湾局
は、同日本事務所を閉鎖したとの理由で、Aに対し解雇を通知した。
Aは雇用主であるB州を相手に雇用契約上の権利を有する地位確認及び解雇後
の賃金の支払いを求めた。
B州は、独立国と同じように条約により日本の裁判所に服さないと主張した。
3 裁判所は何を認めたか?
東京高裁は、Aの請求を却下した。そうしなければ、日本の裁判権がB州の国
家主権を侵害すると考えたためである。
最高裁は、高裁判決を破棄し差し戻した。B州の港湾局日本事務所の業務は主
権的業務ではなく私法的ないし業務管理的な行為であり、Aの請求はB州に対
し現実の就労を強制するものではなく、雇用契約上の権利を有する地位の確認
と解雇後の金銭的救済を求めるものであるから、B州の安全保障上の利益を害
する恐れもないので、それだけの理由であれば、我が国裁判権は免除されない
とした。
4 コメント
主権国家の安全保障と個人の私権の擁護のバランスの問題である。