【懲戒処分が無効であることを確認した事例】

〇中央タクシー事件、長崎地裁平成12年9月20日判決、労働判例

No.798、34頁

1 ポイントは?

会社は労働組合との労働協約に反して団体交渉を経ずに勤務を変える業務命令をしたのか。

2 何があったか?

会社Yが、タクシー乗務員の駅入構を規制し、流し運転を命じたが、労働組合中央タクシー支部組合員であるタクシー乗務員X2~5がこれに従わなかったため、内3名については2週間の出勤停止の戒告処分、1名については経歴詐称もあったとして諭旨解雇の懲戒処分をした。労働組合X1とタクシー乗務員X2~5が、会社Yに対して、未払賃金の請求等の訴えを提起した。

3 長崎地裁は何を認めたか?

〇業務命令違反について

  • X2~5については慰謝料、未払賃金、一時金、X1~5の弁護士費用の支払いを命じた。
  • 会社のタクシー乗務員X2~5の業務命令違反は懲戒処分に該当しないとした。

会社のタクシー乗務員に対する駅入構規制の業務命令は労働組合との団体交渉で決めなければならない事項であり、労働組合と誠実に団体交渉して決めたこととは言えないので、権利の濫用

〇経歴詐欺(X2)について

  • 入社時に質問されたこともないので、懲戒事由には当たらない

〇追加

  • X1については団結権侵害であるとして損害の支払いを命じた。

本件懲戒処分は労働組合を弱体化する目的のために行われたもので不当労働行為であり、不法行為にも該当するとした。

4 コメント

労働組合との団体交渉事項であるか否かは、労働協約の解釈による。会社にしっかりした労働組合があり、労働者が団結していることは、会社にとってつらい側面もあるが、そればかりではない。最近は、元気がなくなった労働組合もあるようだ。しかし、元気を取り戻そう。そうすると、会社も元気になるだろう。