【教育:高校生が不登校になった事件】

損害賠償請求事件

大阪高裁令和3年10月28日判決

(判例時報2524・2525合併号328頁)

1 ポイントは何か?

  • 高校生は、校則を守る義務があるか。
  • 高校教師は、不登校になった高校生をどのように扱うべきか。

2 何があったか?

大阪府立高校の教員が、校則に基づいて、生徒に頭髪を黒色に染めるように指導した。同生徒は、同教員から、繰り返し指導された結果、不登校となった。同教員は、同生徒の氏名を点呼用の名簿から削除し、机やいすを教室から撤去した。

同生徒から、同高校の設置者である大阪府を被告として、大阪地裁に対し、国家賠償法に基づく金226万円余の損害賠償請求の訴えを提起した。

3 裁判所は何を認めたか?

大阪地裁では、同教師の同生徒に対する頭髪指導については違法性を認めず、同教師が、同生徒が不登校となった後にとった氏名の名簿からの削除、机やいすの撤去については安全管理義務違反の違法性を認め、慰謝料30万円、及び、弁護士費用3万円の合計33万円に支払済までの遅延損害金を付加して支払うよう命じた。

同生徒から、大坂高裁へ控訴し、重ねて金226万円余の支払を求めた。

しかし、大阪高裁は、控訴を棄却し、大阪地裁の判決を維持した。

4 コメント

高校生は、高校に入学すると同時に、校則を守ることを誓約させられ、それによって校則を守り、勉強に専念する義務があります。

教師は、生徒に校則を守らせることも教育の一環ですから、違反については厳しく措置されます。特に問題になるのが、頭髪を染めることです。

しかし、校則は、教育の手段のひとつであって、それ自体が目的というわけではありません。もしも、教師の指導が行き過ぎて、教育の目的を通り越して、生徒に対するいじめになっているという場合には、教師の校則指導権限の濫用、あるいは、教育における安全配慮義務の違反として、違法と認められることもありえます。

成長過程の真っただ中にある生徒の心は、傷つきやすい場合があります。「覆水盆に返らず」と言います。取り返しがつかないようになる前に、よく話し合って解決することの重要性を感じる次第です。

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