1 ポイントは何か?
⑴ 死体遺棄罪の保護法益、及び遺棄の意味
⑵ 量刑
⑶ 外国人労働者の雇用
⑷ 外国人労働者の保護
2 何があったか?
⑴ 来日
Yは、平成30年8月に技能実習生として来日し、農園で働き、
⑵ 妊娠
Yは、同年7月頃、妊娠していることを知った。
⑶ 死産、死体遺棄
Yは、同月15日午前9時頃、
Yは、
⑷ 産婦人科受診
Yは、同月16日、
⑸ 捜索
同月17日午後2時10分から午後8時15分までの間、
3 裁判所は何を認めたか?
⑴ 1審
懲役8月、3年間執行猶予(検察官の求刑は、懲役1年)
(犯罪事実)
Yは、出産した嬰児2名の死体を、段ボール箱に入れた上、
(事実認定の補足説明)
ア 遺棄
遺棄とは、
イ 故意
Yに、愛情や埋葬の意思があったとしても、
ウ 期待可能性
Yは、死産で精神的にもショックを受けていたが、
(量刑事情)
ア 送金
Yは、収入の多くをベトナムの家族に送金していた。
イ 厳しい環境
わが国には、実習生の妊娠をサポートする制度もなく、
ウ 程度
Yの行為は、
⑵ 2審
懲役3月、3年間執行猶予
(事実認定について)
ア 保護法益を害するものであるかどうか
遺棄罪の遺棄に当たるかどうかは、
イ 作為としての遺棄に当たるか
Yが、現にした行為は、葬祭を行う準備、
ウ 不作為としての遺棄に当たるか
死体の埋葬義務を行う者が、葬祭を行わないという不作為が、
原判決には、作為としての遺棄と、
⑶ 最高裁判所
無罪
刑法190条の「遺棄」とは、習俗上の埋葬とは認められない態様で死体等を放置しまたは隠匿する行為をいう。自室で出産し、死亡後間もない本件各えい児の死体をタオルに包んで段ボール箱に入れ、同段ボール箱を棚の上に置くなどした行為は、遺体を隠し、発見しにくくしたものだが、その態様自体がいまだ習俗上の埋葬等と相いれない処置とは認められない。
4 コメント
わが国の外国人技能実習生をサポートする制度は、妊娠に限らず、
(外国人の雇用に関する厚生労働省HPの記事)
外国人の雇用 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
最高裁の逆転無罪判決は、「大岡裁き」とも言うべきでしょうか。
死体遺棄被告事件
1審 熊本地裁令和3年7月20日
(裁判所HP裁判例検索)
090591_hanrei.pdf (courts.go.jp)
2審 福岡高裁令和4年1月19日判決
(判例時報2528号123頁、裁判所HP裁判例検索)
090904_hanrei.pdf (courts.go.jp)
最高裁判所令和5年3月24日第2小法廷判決
091943_hanrei.pdf (courts.go.jp)
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