1 ポイントは何か?
複製の程度
2 何があったか?
Aは映像デジタルコンテンツ制作販売等を目的とする会社であり、動画αを作成販売した。Aは、氏名不詳者BがP2P方式のファイル共有プロトコルであるビットトレントネットワークを利用してαを複製し自己の端末にダウンロードし、公衆自動送信したとして、Bに損害賠償請求をする目的で、電気通信事業者CにBの発信者情報開示を求めた。
3 裁判所は何を認めたか?
Cは、ビットトレントネットワークの仕組みではαを複製できない、複製αの共有者は「公衆」とはいえない、調査会社の報告は信用できないなどと反論し、開示を求める正当性を争った。
裁判所はAの主張を認め、Cに対しBについての発信者情報開示を命じた。
4 コメント
ビットトレントネットワークの仕組みでαを完全に複製できるかは微妙だが、調査会社が同一性を確認できる程度の複製になっているので著作権(公衆送信権)侵害があるとされた。AがBに対する損害賠償請求をする前提としての発信者情報開示請求であるから、侵害の事実が立証されたら十分で、被害ないし損害額の証明までは要求されない。インターネット上の匿名投稿が著作権を侵害する場合や他人の名誉・信用を棄損する場合があり、発信者情報開示請求訴訟がこれからさらに増えるだろう。
参考 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 | e-Gov法令検索
(略称プロバイダ法)
以上
発信者情報開示請求事件
東京地方裁判所令和5年6月23日判決(認容)
(裁判所HP裁判例検索、知的財産裁判例集)