【非公開の事件:家事調停、審判の手続きは憲法に違反しないとされた事件】2

1 ポイントは何か?

  親族法、相続法の事件はまず調停を試み、不成立の場合は審判手続に移し、非公開で審理を進め、これにより給付を命じた審判の確定後は執行力のある債務名義となるが、前提となる同居義務等は公開法廷での審理を受ける余地がある。

2 何があったか?

  夫婦の一方が他方に同居を申し入れた。

3 裁判所は何を認めたか?

  同居審判の非公開での審理と給付を命じた確定審判の債務名義としての効力を認めた。

「夫婦同居の義務その他前記の親族法、相続法上の権利義務は、多分に倫理的、道義的な要素を含む身分関係のものであるから、一般訴訟事件の如く当事者の対立抗争の形式による弁論主義によることを避け、先ず当事者の協議により解決せしめるため調停を試み、調停不成立の場合に審判手続に移し、非公開にて審理を進め、職権を以て事実の探知及び必要な証拠調べを行なわしめるなど、訴訟事件に比し簡易迅速に処理せしめることとし、更に決定の一種である審判の形式により裁判せしめることが、かかる身分関係の事件の処理としてふさわしいと考えたものであると解する。 しかし、前記同居義務等は多分に倫理的、道義的な要素を含むとはいえ、法律上の実体的権利義務であることは否定できないところであるから、かかる権利義務自体を終局的に確定するには公開の法廷における対審及び判決によって為すべきものと解せられる(旧人事訴訟手続法〔家事審判法施行法による改正前のもの〕1条1項参照)。従って前記の審判は夫婦同居の義務等の実体的権利義務自体を確定する趣旨のものではなく、これら実体的権利義務の存することを前提として、例えば夫婦の同居についていえば、その同居の時期、場所、態様等について具体的内容を定める処分であり、また必要に応じてこれに基づき給付を命ずる処分であると解するのが相当である。けだし、民法は同居の時期、場所、態様について一定の基準を規定していないのであるから、家庭裁判所が後見的立場から、合目的の見地に立って、裁量権を行使してその具体的内容を形成することが必要であり、かかる裁判こそは、本質的に非訟事件の裁判であって、公開の法廷における対審及び判決によって為すことを要しないものであるからである。すなわち、家事審判法による審判は形成的効力を有し、また、これに基づき給付を命じた場合には、執行力ある債務名義と同一の効力を有するものであることは同法15条の明定するところであるが、同法25条3項の調停に代わる審判が確定した場合には、これに確定判決と同一の効力を認めているところより考察するときは、その他の審判については確定判決と同一の効力を認めない立法の趣旨と解せられる。然りとすれば、審判確定後は、審判の形成的効力については争いえないところであるが、その前提たる同居義務等自体については公開の法廷における対審及び判決を求める途が閉ざされているわけではない。従って、同法の審判に関する規定は何ら憲法82条、32条に牴触するものとはいい難く、また、これに従って為した原決定にも違憲の廉はない。」

4 コメント

  家事調停、審判の手続きの意味が分かりました。

判例

昭和36(ク)419  夫婦同居申立事件の審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告

昭和40年6月30日  最高裁判所大法廷  決定  棄却

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