1 ポイントは何か?
使用者は、従業員が作業する環境を整え、事故から身を守るよう指示する注意義務による安全配慮義務を負うが、本件は従業員が倉庫の2階の商品昇降機用の穴から落ちた事故について使用者に安全配慮義務違反及び不法行為に基づく損害賠償責任を認めた事例である。なお、従業員の過失割合を2割とした。
2 何があったか?
被告の従業員である原告が、平成9年4月8日、営業所の2階の段ボール紙で蓋をしてあった商品昇降機用の開口部から1階に転落して右とう骨頭脱臼骨折、右とう骨末端骨折、右肘内側々副靱帯断裂、左とう骨頭骨折、左肘内側々副靱帯損傷等の受傷をし、通算8カ月の入院、5度の手術、症状固定まで2年2か月の通院及びリハビリを続け、後遺障害等級8級となり、被告に対し、安全配慮義務違反の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として、後遺障害逸失利益、入院治療費、休業損害、及び慰謝料等合計3884万8739 円及び上記受傷日であるから民法所定の年5分の割合の遅延損害金の支払を請求した。
3 裁判所は何を認めたか?
1584万5075円及び遅延損害金の支払を命じた。
被告は原告に対し、①開口部に堅牢な蓋をする、②原告に転落の危険から身を守る具体的指示をするなどの注意義務違反による安全配慮義務違反及び不法行為責任を免れない。合計2460万1281円が原告に生じた本件事故と相当因果関係のある損害(他に弁護士費用)と認められる。本件事故は、原告が入社2日目で被告営業所内の未だ案内のされていない場所に指示なく赴いた際に発生したものであり、本件開口部付近の状況を併せ考慮すれば、本件事故に対する原告の過失割合は2割と認めるのが相当である。
4 コメント
使用者は、従業員の身の安全を守らなければなりません。
本件判決文では特に問題になっていませんが、使用者の損害責任保険の保険対象を確認されますよう契約の際にご注意を。
判例
平成12(ワ)183 損害賠償等請求
平成13年12月3日 福岡地方裁判所