1 ポイントは何か
自筆証書遺言に付する財産目録は自筆でなくてもよくなった。ただし、各頁に遺言者の署名押印が必要である。その署名押印を欠いた場合の自筆証書遺言の効力はどうか。本件は、無効とはならない場合を認めた。
2 何があったか
Aは自筆証書を作成したが、自筆ではない財産目録の頁に署名押印を欠いていた。財産目録は、Aの全財産を網羅したものではなかった。
その遺言の内容は、Bらに遺贈ないし相続させるというものであった。
Cらがその自筆証書遺言の有効性を争った。
3 裁判所は何を認めたか?
C敗訴。
本件遺言書の財産目録は、生命保険や法定相続分で分ける金融債権などであり、なくても本文に影響がなく、すべての金融資産が網羅されている必要もないので、本件遺言書の全体が無効になることはない。
(引用判例)
保険金受取人としてその請求権発生当時の相続人たるべき個人が指定されている場合には,当該請求権は保険契約の効力発生と同時に当該相続人の固有財産となり,被保険者兼保険契約者の遺産より離脱している(最高裁昭和40年2月2日第三小法廷判決・民集19巻1号1頁参照)。
そもそも民法968条1項が自筆証書遺言の方式としてその全文の自書を要するとした趣旨は,遺言者の真意を確保すること等にあるのであって,必要以上に遺言の方式を厳格に解するときは,かえって遺言者の真意の実現を阻害することになりかねない(最高裁令和3年1月18日第一小法廷判決・裁判所時報1760号2頁参照)。
4 コメント
社会保障制度の充実とともに、相続財産の承継は過去の制度になっていかなければならない。遺言制度が社会保障制度の充実に結び付く方策があれば望ましい。
判例
令和2(ワ)3023 遺言無効確認請求事件
令和3年9月24日 札幌地方裁判所
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