1 ポイントは何か?
本件は、18歳で知能レベル6歳程度の知的発達障碍の女性が被害者となったわいせつ目的誘拐、強姦致傷事件であり、社会的弱者に対する冷酷、無慈悲、悪質な犯行であるとして実刑判決が下された。被告人は、刑事の暴力を受けて自白したのであり、供述の任意性がなく、信用性もないと争ったが、裁判所は、いずれも認められるとした。
2 何があったか?
Aは、平成14年5月14日、当時18歳で知能レベル6歳程度の知的発達障碍の女性であるが、Bの子のCに会うために、Bに電話したところ、BがAを車で迎えに来て、パチンコ店で遊ばせた後、ドライブに誘い、車の中で強姦し、Aは全治1週間の怪我を負った。Aは、翌日、警察に電話で被害届けをした。
Bは同年9月8日逮捕され、当初、Bは、Aに会ったこともないと否認していたが、同月18日一部自白し、同月26日全部自白した。
検察官は、Bを強姦目的の誘拐と強姦致傷罪で起訴した。
弁護人は、Bは、F刑事の暴力で自白させられ、その供述に任意性も信用性もなく、Aの供述には信用性がないと主張した。
3 裁判所は何を認めたか?
Bを懲役4年6月の実刑、未決拘留日数中360日を刑に参入するとした。
Bの供述の任意性についてはF刑事の証人尋問も行われ、F刑事は、Bの取り調べにおいて暴力など振るっていないと証言した。
Bの自白の任意性、信用性が認められ、Aの供述には一貫性があるとして信用性が認められた。
Bの本件犯行は、社会的弱者に対する冷酷、無慈悲、悪質な犯行であるとされた。
4 コメント
異例の長期裁判だったようである。
Bは、妻子と別居していた。Aと、Bの子のCは、同じ授産施設に通っていた。
授産施設とは、生活保護法38条等で設けられている自立支援施設のひとつである。
AにとってCの父親からこのような被害を受けたことは相当なショックだったろう。
知能レベルの低い知的障害者が、さまざまな犯罪被害にあわないように、特別の教育を行うことも必要であろう。
判例
平成14(わ)1073 わいせつ誘拐,強姦被告事件
平成16年1月27日 神戸地方裁判所
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