【刑事事件:車両を被害店舗の屋上駐車場に止め、店内で雑誌、菓子、カーペットなど1万円超相当額の商品をカートに入れて、精算せずに駐車場まで運んで万引きした事件】

1 ポイントは何か?


  被告人は、ウェルニッケ・コルサコフ症候群(「コルサコフ症候群」と呼ばれる栄養障害性脳障害である。)、摂食障害、アルコール依存症、クレプトマニア(窃盗症)、PTSD等の精神障害がある。被告人は、前回の万引きで受けた執行猶予付きの判決の執行猶予期間中に、再び万引きをし、懲役8月の実刑判決を受けた。被告人の精神障害は、責任能力を制限するものではないとされた。


2 何があったか?


  被告人は、コルサコフ症候群、摂食障害、アルコール依存症、クレプトマニア(窃盗症)、PTSD等の精神障害がある。被告人は、前回の万引きで執行猶予付きの判決を受けた。その執行猶予期間中に、車両で出かけ、店舗の屋上駐車場に止めた。そして、店内で雑誌、菓子、カーペットなど1万円超相当額の商品をカートに入れて、精算せずに駐車場まで運んで万引きをした。そこで、店舗の警備員に声をかけられ、犯行を認めた。
被告人は、窃盗罪で起訴された。
援護人は、心神耗弱(刑法39条2項)を主張した。


3 裁判所は何を認めたか?


  被告人は、懲役8月の実刑判決を受けた。
  被告人は、あたりをうかがって、屋上駐車場に向かっており、その精神障害は、責任能力を制限するものではないとされた。


4 コメント


  クレプトマニアは、違法とわかっていても自ら制止することができないので、常習的に万引きをするのであるから、これは、心神喪失として無罪(刑法39条1項)あるいは心神耗弱として必要的減軽(同条2項)をすべきであると考える。ただし、それを認める裁判例は裁判所ホームページに敬愛されている裁判例には見当たらない。
  構成要件的故意と、責任要件としての故意を明確に分けるべきである。構成要件的故意は、エコバッグを持参し、自動車で店舗の屋上に止めて店舗に入るという計画性、発覚を免れようとしてきょろきょろする態度、常習性などから、明らかに構成要件的には故意が存在していると考えられるが、違法行為を自ら制止できないということは、是非善悪弁別能力がないことと同じであり、責任要件としての故意がないということにならないか。

判例

大阪高等裁判所第1刑事部平成26年(う)第829号窃盗被告事件、平成26年10月21日判決、
原審葛城簡易裁判所

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