【刑事事件:犯人の用いた包丁が被害者の左脇腹に刺さった強盗致死事件】

1 ポイントは何か?

 

  犯人は包丁を刺入する意思があったのか。

 

2 何があったか?

 

  被告人は、包丁を被害者の首に向けて金を脅し取ろうとしたが、被害者にタックルされて転倒し、被害者が馬乗りになった過程で、包丁が被害者の左腋下に刺さり、被害者が出血性ショックで死亡した。

 

3 裁判所は何を認めたか?

 

  地裁は被告人の意思で被害者を刺したと認定したもののようであり、無期懲役としたが、高裁は、被害者が被告人にタックルし馬乗りになったために被告人が手にする包丁が被害者の左腋下に刺入した可能性を合理的疑いをさしはさまない程度に否定することは難しいとして懲役28年の有期懲役刑とした。

 

4 コメント

 

  「疑わしきは被告人の利益に」という法諺がある。被告人に包丁を刺す意思があったと合理的疑いなしに認定できなければ、量刑は、被告人に有利となる。このことを、被害者のご遺族にどう説明するか。  

 

判例

仙台高等裁判所 令和5(う)158  強盗致死、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
令和6年5月23日判決(破棄自判)  

原審  仙台地方裁判所