【同性婚事件:国が法律で同性婚を認めないことが憲法違反であると主張した事件】

名古屋高等裁判所 令和5(ネ)570  国家賠償請求控訴事件
令和7年3月7日判決 (原審、名古屋地方裁判所)

1 ポイントは何か?

民法及び戸籍法が同性婚を認めていないことは違憲か。その立法不作為は国家賠償法上違法か。

2 何があったか?

同性カップルのA及びBが、国の立法不作為は憲法24条及び同14条1項に違反し、国家賠償法1条1項の違法に該当するとして、国に対し各100万円の損害賠償請求をした。

A及びBは、憲法24条は両性合意成立主義、夫婦同権主義等を、同14条1項は性別による差別の禁止等を定めるが、国際人権規約に基づき両規定を合理的に解釈すべきであり、同性婚を認める規定を全く定めず放置していることは憲法違反であり、その立法不作為は国家賠償法1条1項の違法に該当すると主張した。

3 裁判所は何を認めたか?

A及びBが敗訴した。

名古屋地裁は、同性婚を容認する枠組みすら設けていないことが憲法に違反するが、民法及び戸籍法に同性婚を認める規定を定めていないことが明白に憲法違反であるとは言えないとしてA及びBの請求を棄却した。

名古屋高裁は、同性婚を認めないことは憲法違反であると認めた。しかし、国民の大多数が同性婚を肯定するようになったのは平成30年以降であり、同性婚を認めないことの憲法適合性についての司法判断が札幌地方裁判所令和3年3月17日判決までなく、その後、下級審の判断が積み重ねられているとはいえ最高裁の判断はまだなく、国の立法不作為が国家賠償法上違法であるとは言えないとしてA及びBの控訴を棄却した。

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自治体で2015年に東京都渋谷区でパートナーシップ宣誓制度が、2021年に兵庫県明石市でファミリーシップ制度が認められ、広まりつつある。それが近い将来国の法律制度として結実することだろう