東京地方裁判所平成10年(ワ)第10130号損害賠償請求事件平成15年
2月13日判決
1 ポイントは何か?
拘置所の勤務医、検察官、裁判官のそれぞれの注意義務
2 何があったか?
⑴ 平成4年
Aは7月14日久留米大学病院眼科において再発性ぶどう膜炎との診断を受け、12月ころまでにベーチェット病との診断
を受けた。
⑵ 平成7年
7月7日詐欺罪により逮捕され、翌8日勾留され、27日釈放、即別の詐欺罪により逮捕、29日勾留された。
8月17日福岡地方裁判所に詐欺により公訴提起。
9月8日、11月15日、いずれも詐欺により、12月25
日、有印公文書偽造、同行使、有印私文書偽造、同行使、詐欺により追起訴。
勾留場所は、10月26日までは博多警察署で、同日以降は福岡拘置所。
12月12日、B医師、Aのベーチェット病の発作に対しコルヒチン(1回2錠.朝・夕食後)及びミドリンM点眼薬(1
日4回)を処方。
⑶ 平成8年
4月16日、Aが内服薬を中止したい旨申し出た。同日~5月7日中止。(鑑定において、本件医師らが中止させたことは
適当でないとされた。)
7月16日、Aが内服薬を中止したい旨申し出た。
8月23日保釈請求し、同月27日却下。
⑷ 平成9年
1月7日、第2回保釈請求、9日却下。
24日、弁護人は、内容証明郵便で検事及び拘置所長あてベーチェット病の診療ができる病院を受診させることを要求し
た。
29日、勾留執行停止申立。
2月4日、拘置所からク久留米大学病院に押送、受診。左眼視力
なし。
17日、刑事事件が結審。第3回保釈請求。
3月5日、勾留執行停止の職権発動はしない、第3回保釈請求却下。
4月30日判決(懲役5年6月、未決400日算入)。
5月1日、Aが福岡高等裁判所に控訴。Aが同高裁に勾留執行停止申立。同日、勾留執行停止決定(6月23日~7月14日)。
7月2日、久留米大学病院眼科で左目緑内障手術。
9月8日、福岡市から5級の身体障害者と認定。
11月25日、Aが同高裁に勾留取消請求、28日、却下。
⑸ 平成10年8月19日、福岡高等裁判所は原判決破棄、(懲役4年6月
、原審未決400日算入)。同日、Aが最高裁判所に上告。保釈請求。
20日、保釈許可、A釈放。
⑹ 平成12年
3月19日、上告棄却決定、確定。
5月24日、刑の執行停止。
⑺ 平成14年
2月20日、左目完全失明。
3 裁判所はなにを認めたか?
裁判所は、国がAに対し損害賠償金2167万余円を支払うよ
う命じた。拘置所の勤務医の注意義務違反により、Aの国家賠償
請求を認めた。
「左目については、遅くとも平成8年9月17日に発作の訴え
があったときから平成9年1月9日に全盲状態であると訴えたと
きまでの間に、拘置所外の安価専門医の診察と治療を受けさせる
べきであったと認められる。」
検察官及び裁判官の注意義務違反は認めなかった。
4 コメント
拘置所の医師の注意義務違反に注目する。