大阪地方裁判所令和4(ワ)6718 損害賠償請求事件
令和7年 5月27日判決
1 ポイントは何か?
石綿肺、業務、安全配慮義務違反、損害
2 何があったか?
Aは昭和7年に生まれ、令和2年に死亡した。
B社は、昭和28年に大阪市に設立された建材卸等を業とする会社で、Aはそ
の和歌山営業所に平成11年まで勤務し配送作業に従事した。Aが同営業所に
いたのは昭和45年からか、同56年からか争いがある。平成21年に、和歌
山労働局長からじん肺管理区分4の決定を受け、同年に、和歌山労働基準監督
署長が石綿肺の発症を平成20年として療養補償給付、休業補償給付の支給を
決定し、令和3年に、じん肺続発性気管支炎を直接死因と認定し、遺族補償給
付、葬祭費支給を決定した。
Aの遺族CらがB社に対し、通院慰謝料500万円、死亡慰謝料3000万円
及び弁護士費用の損害賠償請求訴訟を提起した。
B社は、⑴Aは石綿肺に罹患していなかった、⑵Aが和歌山営業所で配送業務
に従事したのは昭和56年以降で、石綿に被爆していない、⑶雇用していなか
った、⑷慰謝料が高すぎる等と争った。
3 裁判所は何を認めたか?
Aの遺族Cら勝訴。B社に対し約2000万円を支払うよう命じた。⑴医学的
知見に基づきAのX線画像上胸膜プラークが認められることを主要な根拠とし
て石綿肺を認定し、⑵労働基準監督署調査官のB社従業員からの聞き取りや国
民健康保険の始期等からAは昭和45年から和歌山営業所で配送業務に従事し
たてことを認定し、倉庫内や配送先の工事現場で相当程度の石綿に被爆した事
実を認定し、⑶AがB社の他の労働者と同様の立場で業務に従事し、B社との
関係で特別の社会的接触関係にあり、B社は信義則上安全配慮義務を負うとし
、⑷Aは死亡時87歳であったことから慰謝料2500万円と積算し、これか
ら1日20本喫煙していたことによる過失割合として1割減額して2250万
円とし、弁護士費用を225万円とした。
4 コメント
Aの遺族らとその代理人弁護士は、医学的証拠、勤務期間や態様の証拠など、
相当困難な認定にしっかりと対応したと思う。