【行政事件:消防隊の小隊長、分隊長が部下の消防士らにパワハラをして懲戒処分を受けた事件】

Ⅰ事件 最高裁判所第三小法廷  令和6(行ヒ)214 懲戒処分取消請求事件令和7年
9月2日判決(原審、福岡高等裁判所)
Ⅱ事件 最高裁判所第三小法廷  令和6(行ヒ)241 懲戒免職処分取消等、懲戒処
分取消請求事件令和7年9月2日判決(原審、福岡高等裁判所)

1 ポイントは何か?


懲戒処分権の濫用の有無。

2 何があったか?


Ⅱ事件の被上告人X2はI市消防本部の消防隊分隊長で、Ⅰ事件の被上告人X1
は同小隊長であるが、部下の消防隊員らに対しパワハラをして、I市消防長よ
り、X2は懲戒免職処分、X1は停職6月の各懲戒処分を受けた。X2は、I
市を被告として懲戒免職処分の取消請求と国家賠償請求を、X1は懲戒処分の
取消請求を福岡地方裁判所に申し立てた。
I市ハラスメントの防止等に関する規程は、パワー・ハラスメントとは、他の
職員に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務
の適正な範囲を超えて、精神的若しくは身体 的苦痛を与える言動又は職場環境
を悪化させる言動をいうものとし、職員は、職員相互の人権を尊重し、ハラス
メントをしてはならない旨を規定する。

3 裁判所は何を認めたか?


地裁、高裁では、X1・2が勝訴したが、最高裁で逆転敗訴となった。
「公務員に対する懲戒処分について、懲戒権者は、諸般の事情を考慮して、懲
戒処分をするか否か、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択するか
を決定する裁量権を有しており、その判断は、それが社会観念上著しく妥当を
欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に、違法
となるものと解される(最高裁昭和47年(行ツ)第52号同52年12月
20日第三小法廷判 決・民集31巻7号1101頁、最高裁平成23年(行ツ
)第263号、同年(行 ヒ)第294号同24年1月16日第一小法廷判決・
裁判集民事239号253頁 等参照)。」

4 コメント


消防士は、その任務のために、心からの相互の信頼が大切であり、パワハラな
どあってはならない。
処分の裁量権は逸脱濫用のない限り有効という基準は留意する必要がある。

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