〇大阪高裁平成16年12月2日判決、金融・商事判例1223号15頁
1.ポイントは?
不動産売買で、売主や仲介業者は、買主に対し、不動産売買契約締結までに、近隣からの苦情についてどこまで説明する義務を負うか。
2.何があったか?
原告Xは、居住用に、第一種低層住居専用地域にある土地建物を購入したが、入居のための下見に行ったとき、隣家から怒鳴られ、放水を受けたりして居住を断念した。
Xは、売主YI及び仲介業者Y2を被告として、不動産売買契約締結前に、隣人からの苦情についての十分な説明をしなかったことは詐欺及び説明義務違反にあたるとして売買代金2280万円、購入経費253万余円、慰謝料300万円の合計2833万余円の損害賠償請求事件を提起した。地裁で敗訴し、高裁に控訴した。
なお、予備的にY1を被告として錯誤無効による代金相当額の不当利得返還請求をした。
(※売主は実際は2名だったが、ここでは単純化するために1名として説明する。)
3.高裁判決は何をみとめたか?
1.詐欺、説明義務違反について
Xが主張する詐欺取消は認められなかった。Y1及びY2らは、Xに対し、客観的事実に明らかに反する説明をしたとは認められないとの理由であった。
しかし、Y1及びY2らは、説明義務に違反し、Xに、最近は隣人との間で全く問題がないと誤信させたことを認めた。
2.Xが被った損害について
Xが被った損害については、Y1とその家族らが本件建物で約2年半生活していたこと等から、Xとその家族らが客観的に本件建物に居住できないとまで認めることはできないとして、売買代金の20%にあたる456万円のみの損害を認めた。
3.予備的請求としての錯誤無効による代金相当額の不当利得返還請求について
Xが予備的にY1に対してのみ主張した錯誤無効については、隣人がどのような者であるかということは、本件土地建物の性状、権利関係とは異なり、動機の錯誤に過ぎず、要素の錯誤ではないとして、認めなかった。
4 コメント
2017年に改正され、2020年4月に施行された民法の債権法関係の改正法で、錯誤による法律行為の効力は、無効ではなく、社会通念上重要な錯誤がある場合に取消権が付与されることになった。また、土地建物の性状や権利関係などと異なる事情であっても契約の基礎として表示したことは、取消の対象となることも条文上明記された(民法95条)。
素人には十分な調査能力がないので、そのために仲介業者に依頼する意味があるので、仲介業者に対し、不動産を購入する目的は何か、そのために何か重大な不利益をもたらす事情はないか、調査を怠らないように求めておくべきである。
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