【K財団の部長が、懲戒処分である諭旨解雇とされた事件】

東京地裁平成21年6月12日判決 労働判例No991、64頁)

労働判例には財団名も明らかにされており、事件当時の新聞でも報道されたが、最高裁の裁判例検索には掲載がないので、一応、財団名をKとしておく。

1 ポイントは?

 部長Xが、常任理事Aの多数の部下に対するパワハラ・セクハラの疑いを報告書にまとめて理事長Bに報告し、また、一部の職員に同報告書を閲覧させたことが、Xに対する懲戒処分としての諭旨解雇に相当するか。

2 何があったか

K財団は、Xが理事長に提出した報告書について、内部調査委員会や外部調査委員会を設けて調査したところ、調査結果は、Aにパワハラ・セクハラがあったと結論付けることには問題があるというものであった。また、このことは新聞報道もされた。そこで、Xを配置替えした上で自主退職を求め、Xがこれに応じなかったので、懲戒処分である諭旨解雇とした。

  Xは、K財団に対し、労働契約上の地位確認、並びに、解雇後の賃金月額約54万円、賞与毎半年約95万円および慰謝料1000万円等の支払いを求めて東京地裁に訴えを提起した。

3 裁判所は何を認めたか?

 X勝訴: 解雇後の賃金および賞与は請求通り。慰謝料は50万円。

東京地裁は、Xが部長としてAの部下に対するパワハラ、セクハラの疑いをBに報告することは部長としての職責に属することであり、報告書の内容の真実性の程度や公開の範囲などについて検討したうえで、Xの行為は、懲戒処分である諭旨解雇の理由となるとまでは言えないと判断した。

4 コメント

 本件諭旨解雇の時点ではすでに公益通報者保護法(平成16年法律122号)も平成18年4月から施行されていたので、Xの職責とされなくても同法の公益通報者として保護された可能性もある。