【不動産会社から解雇された営業本部長と、退職した営業担当従業員が、会社を訴えた事例】

東京地裁平成22年10月27日判決

  労働判例No.1021、39頁

1 ポイントは?

  • 不動産会社の営業本部長の肩書。
  • 不当解雇。
  • 外出営業の勤務時間。

2 何があったか?

Y不動産会社の営業本部長X1の権限、勤務、賃金は、他の従業員とあまり変わらなかった。X1は、会社の業績が低下したとして減給され、解雇された。営業本部長X1と外回り営業X2は、Yの就業規則により、規定の時間働いただけとみなされ、残業手当、休日手当が支給されなかった。

X1は自分の会社を設立したが、解雇が不法行為であるとして損害賠償金約1670万円、残業および休日手当の未払賃金約393万円、並びに、労働基準法114条に基づく付加金約390万円の合計約2453万円を請求した。

X2は退職したが、退職前の残業および休日手当の未払賃金約75万円、並びに、付加金約75万円の合計約150万円を請求した。

3 裁判所は何を認めたか?

  • X1、X2とも一部勝訴。
  • X1について、解雇は不当解雇であり不法行為に該当するとして約80万円の損害賠償金を認め、約393万円の未払賃金、および、約271万円の付加金を認めた。合計約744万円。

なお、付加金の額は未払賃金と同額であるが、X1の請求額の一部は2年の除斥期間の適用により認められなかった。

  • X2については、約76万円の未払賃金を認めた。なお、付加金は全額、除斥期間の適用により認められなかった。

4 コメント

X1もX2もいわゆる本人訴訟(訴訟代理人がいない。)であった。

X1およびX2は、請求した金額を払い終わるまでの遅延損害金も請求しており、その法定利率は、損害賠償金は民法所定の5パーセント、未払賃金の場合はYが会社であるから商事法定利率6パーセント、そして、付加金の場合は「賃金の支払の確保等に関する法律」の第6条第1項と政令に基づいて14.6パーセントであった。しかし、X1は、付加金についても5パーセントの遅延損害金しか請求していなかった。X2が請求しているのに、知らなかったのだろうか。また、裁判官も注意してくれなかったのだろうか。

平成28年の民法債権関係の法律改正により、現在では、商事法定利率は廃止され、民事法定利率も3パーセントに下げられた。

付加金の除斥期間について、X1とX2は、除斥期間の主張は権利濫用であると主張しなかったのだろうか。もっとも、最高裁のHPの裁判例検索では、付加金について除斥期間を適用しなかった裁判例の掲載はなかった。しかし、それ以外の場合に除斥期間の適用をしなかった事例の掲載はある。

 

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