保護責任者遺棄致死
福岡高等裁判所令和4年11月9日判決
(裁判所HP裁判例検索)
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/561/091561_hanrei.pdf
1 ポイントは何か?
⑴ マインドコントロール
⑵ 量刑
2 何があったか?
母親Yが、いわゆる「ママ友」Bのマインドコントロールによって、三男Aに食事を与えず、餓死させた。
3 裁判所は、何を認めたか?
⑴ 地裁
懲役5年の実刑
⑵ 高裁
控訴棄却
弁護人は、Yが、Bのマインドコントロールによって、適切な行動を選択することの期待可能性が極めて減弱していたとし、Aの父親C、YとCの長男D、Yの両親E及びFらが、Yの処罰を望んでいないこと、Yには早い社会復帰が必要であることを主張した。
しかし、高裁は、Yが、このような状況下においても、Bに対する不満をメモに残していること、自分の判断で電話をかけることができていることなどから、これらの主張を認めなかった。
4 コメント
⑴ マインドコントロール
消費者庁の若者の消費者被害検討会報告書第5章(113頁)に、マインドコントロールについての検討がある。
https://www.caa.go.jp/future/project/project_001/pdf/project_001_180831_0001.pdf
マインドコントロールとは、単に、虚偽の告知によって判断を誤らせるだけでなく、相手の思考をほぼ完全に支配し、社会常識に従った、適切な行動をとる期待可能性を奪うことだと言えよう。
マインドコントロールを認めるか否かについては賛否両論がある用である。
しかし、マインドコントロールによって、社会常識に従った、適切な行動をとる期待可能性が、極度に制限された場合は、刑事責任がなく、無罪としてもよいのではないか。
それほど極端でない場合でも、期待可能性の低下に応じて、量刑を下げることが妥当である。
⑵ 児童相談所の機能
児童相談所が迅速に活動していれば、Aの命を救うことができたということも考えられる。
映画「僕だけがいない街」(藤原竜也、有村架純、2016年)に、児童相談所が活躍する場面があり、印象に残っている。
児童相談所などに、マインドコントロールの被害者に対して適切な救済措置がとれるような行政処分の権限を与えることも必要である。
⑶ マインドコントロールの処罰
マインドコントロール自体を処罰する法律も必要であろう。
第210回国会(臨時会、令和4年)で、旧統一教会の関係で、救済法案が成立した。
(議案要旨)
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/210/pdf/580210180.pdf
(成立した法律)
「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」の第4条で禁止行為(とくに第6号が霊感に関係する。)。7条で停止勧告、禁止命令、第16条ないし第18条で罰則。
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/210/pdf/s0802100222100.pdf
「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律」
以上
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