1 ポイントは何か?
拘置所での診療録の開示を求めることができるか
2 何があったか?
Aは,平成28年1月25日,被告人としてB刑務所に収容され,同年7月20日,同刑務所からC拘置所に移送された。AはC拘置所内医務室で診療を受けた。
Aは平成29年5月12日,D矯正管区長Eに対し,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律12条1項(開示請求権)に基づきCでの診療録に記録されている個人情報αの開示を請求した。
Eは、同法45条1項(適用除外)に基づきαの全部を開示しない旨の決定βをした。
Aは、行政事件訴訟法11条1項1号に基づき国代表者法務大臣Gを相手にβの取消しを求めるとともに,国家賠償法 1条1項に基づき慰謝料等の支払を求めた。
3 裁判所は何を認めたか?
⑴ 原審 東京高等裁判所
Aの請求を棄却した。
Αは同法45条1項(適用除外)に当たる。
⑵ 最高裁判所
原判決破棄差戻し。
αは同法45条1項(適用除外)に当たらない。
高等裁判所でさらに審理する必要がある。
4 コメント
Aが拘留中のC拘置所内での診療録の開示を求める方法としては、
①まずC拘置所に連絡し、本人申請ないし代理人が所属する弁護士会からの照会で開示してもらえるか打診してみる。
②C拘置所では回答できないということであれば、どこに連絡すればよいかを聞く。
③D矯正管区長Eあて開示請求書を送付するAの委任状が必要。④D矯正管区長Eが開示に応じなければ国代表者法務大臣Gに対し(法務大臣Gから権限又は事務の委任を受けたD矯正管区長E、診療録所在地C拘置所長Hも表示)、個人情報開示請求訴訟を提起する。
⑤国代表者法務大臣Gに対し国家賠償請求訴訟を提起し、文書送付嘱託を申立てる。
など。
(参考)
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律56条、同法62条1項等、30条の2,医療法施行令3条2項
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律 | e-Gov法令検索
医療法施行令 | e-Gov法令検索
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律12条1項(開示請求権)、14条(保有個人情報の開示義務)、45条1項(適用除外等)
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律 | e-Gov法令検索
行政事件訴訟法11条
行政事件訴訟法 | e-Gov法令検索
以上
令和2(行ヒ)102 情報不開示決定取消等請求事件
令和3年6月15日最高裁判所第三小法廷判決(破棄差戻)
原審 東京高等裁判所