【横領刑事事件:社会福祉法人の設立者と法人財産の管理者が経営権譲渡契約を締結し、法人財産の横領のため共謀した事件】

1 ポイントは何か?

  業務上横領

  経営権譲渡契約

  医療協力委託契約

  主導的なはたらき

  社会福祉法人の破産

2 なにがあったか?

  AとBは共謀して社会福祉法人CからAが業務上預かり保管していた通帳から情を知らない経理担当者Fに指示してEクリニックB名義の口座に約5億7000万円を送金させて横領した。

  AとBはBからAへのCの経営権譲渡契約を締結しており、代金約42億円のうち分割払い分22億円の支払いの一部として本件送金が行われた。

  Aは受託者、C傘下の施設らが委託者として、実体のない医療協力委託契約が締結されていた。

3 裁判所は何を認めたか?

  AとBは業務上横領罪の共同正犯として起訴され、Aは懲役8年、Bは懲役4年を求刑された。Bは遅延損害金を含め被害金全額を弁償した。

  Aは業務上占有があり主導的であるとして懲役5年の実刑、Bは業務上占有がなく懲役3年執行猶予5年の刑の判決が下された。

4 コメント

  社会福祉法人の財産の流出は許されない。

社会福祉法人Cを設立したBが実質的な投資と個人財産の形成と考え、その回収を図ったために生じた問題。とすれば、主導者はAではなくBであるということにならないか。

社会福祉法には社会福祉法人の解散、清算、合併の規定はあるが、分割や事業譲渡の規定はない。もしその必要が生じた場合、どうするのだろうか。

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判例

令和5刑(わ)258  業務上横領

令和5年9月6日  東京地方裁判所