【不服申立不可の事件:会社更生計画認可決定に対し抗告を申し立てた事件】

1 ポイントは何か?

会社更生計画認可決定に対する抗告はできない。

2 何があったか?

  裁判官が会社更生計画の認可を決定した。

3 裁判所は何を認めたか

  最高裁判所は、更生計画認否の決定に不服の申立ができないとして、特別抗告を棄却した。

「憲法32条にいう裁判とは、同法82条にいう裁判と同様に、現行法が裁判所の権限に属せしめている一切の事件につき、裁判所が裁判の形式をもってするすべての判断作用ないし法律行為を意味するものではなく、そのうち固有の司法権の作用に属するもの、すなわち、裁判所が当事者の意思いかんにかかわらず終局的に事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判のみをさすものと解すべきであって(昭和26年(ク) 第109号・同35年7月6日大法廷決定・民集14巻9号1657頁、昭和36 年(ク)第419号・同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1089頁、 昭和37年(ク)第243号・同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1114頁、昭和39年(ク)第1114号・同41年3月2日大法廷決定・民集20巻3号360頁、昭和41年(ク)第402号・同45年6月24日大法廷決定・ 裁判所時報548号96頁等参照)、憲法32条は、かかる裁判の請求権を保障しているものにほかならず、その本質において固有の司法権の作用に属しない非訟事件は、憲法32条の定める事項ではなく、したがって、非訟事件の手続および裁判に関する法律の規定について、憲法32条違反の問題は生じないものと解すべきである。

ところで、会社更生手続の眼目であり、会社更生の基準となる更生計画は、関係人集会においてその案が審理可決された上、裁判所の認可をもってはじめて有効に成立するのであるが(法232条以下)、裁判所のなす右更生計画認否の裁判は、国家のいわゆる後見的民事監督の作用に属し、固有の司法権の作用に属しないことが明らかであって、その本質は非訟事件の裁判であり、それに対する不服の申立もまた純然たる訴訟事件ではないと解すべきである(昭和37年(ク)第64号・同 41年12月27日大法廷決定・民集20巻10号2279頁参照)。

また、改正前の法241条、法242条、243条による更生債権失権の効果は、有効に成立した更生計画を要件として法律により定められた私権の変更の効果にほかならない。

以上の次第で、右失権の定めおよび前説示の更生計画認否の決定に不服の申立ができない(改正前の法237条)旨の定めは、非訟事件に関する定めであり、憲法32条が保障する裁判請求権の制限ないし剥奪と解すべきものではなく、 したがって、同条に違反するものということはできない。なお、更生手続中、所論の更生債権確定の訴は、純然たる訴訟事件と解すべきであるが、この訴の前提となる更生債権届出期間の定めおよびこの訴についての出訴期間の定めは、会社更生法の目的に照らし必要かつ合理的なものであり、実質上裁判の拒否と認められるような不合理な点は認められないから、憲法32条に違反するものではない(昭和23年(オ)第137号・同24年5月18日大法廷判決・ 民集3巻6号199頁参照)。」

4 コメント

  更正計画の認可は会社更生のかなめ。それが裁判官にまかされた制度となっている。