1 ポイントは何か?
大学生らが大学法人を相手に退学処分の取消しを求めた訴訟であり、裁判所は、憲法の私人間への適用を認めず、大学に、学生の懲戒権について、それぞれの校風と教育方針に基づく広い裁量権を認めた事例である。
2 何があったか?
原告らは、A女子大学の学生らであったが、昭和37年2月12日、学生の署名運動の事前届出制、及び、学外での団体加入の許可制を定めた学則に違反したとして、退学処分を受けた。
原告らは、憲法違反を主張して、退学処分の取消しを求める訴えを提起した。
3 裁判所は何を認めたか?
原告ら敗訴。
憲法が定める人権規定は、国や公共団体と私人の関係を定めるものであり、私人相互間では問題とならない。
(引用判例)
当裁判所大法廷判例(昭和四三年(オ)第九三二 号同四八年一二月一二日判決・裁判所時報六三二号四頁)
当裁判所大法廷判例(昭和三一年 (あ)第二九七三号同三八年五月二二日判決・刑集一七巻四号三七〇頁)
昭和二八年 (オ)第五二五号同二九年七月三〇日第三小法廷判決・民集八巻七号一四六三頁、
昭和二八年(オ)第七四五号同二九年七月三〇日第三小法廷判決・民集八巻七号 一五〇一頁参照)。
4 コメント
憲法の定める基本的人権は、私立大学における大学法人と学生の関係には直接適用されるものではないが、本件原告となった当時の学生たちは、裁判所に訴え出ることによって、私人間にも、間接的であるにせよ憲法が適用されることを期待したであろう。
判例
昭和42(行ツ)59 身分確認請求
昭和49年7月19日 最高裁判所第三小法廷 判決