【刑事事件:公職選挙法違反で罰金40万円追徴50万円の刑に処せられた事件】

1 ポイントは何か?

公職選挙法221条1項4号、1号は選挙協力目的の買収等を3年以下の懲役もしくは禁固又は50万円以下の罰金刑とする。本件は、40名以上の地方議会議員や首長らが取調べを受けた大型公職選挙法違反事件であり、起訴されたうちの1件である。

2 何があったか?

  被告人は、広島市議会議員である。被告人は、令和元年の第25回通参議院議員通常選挙の候補者Aの配偶者Gから自宅で50万円を受け取った。検察官は不起訴としたが、検察審査会が起訴相当とした。被告人は、Gから50万円を受取ったことは認めたが、①50万円はAの選挙運動目的の金ではなく、②被告人はAの運動員ではなく、③被告人の起訴は公訴権濫用であると争ったが、罰金40万円、追徴50万円の有罪となった事件である。

Gは、令和3年6月18日、本件選挙に際し、被告人を含む地方議会議員等多数の者に対し、買収の趣旨で現金を供与した罪等で有罪判決を受け、同5年10月21日同判決は確定した。

3 裁判所は何を認めたか?

被告人は有罪。罰金40万円追徴50万円。

①Aは同一選挙区に同一政党からHと共に2人立候補が認められ、県連は他の候補者を推していたことから、GはAのために積極的に活動した。Gと被告人の関係は、Gの秘書Lが被告人と同一選挙区から立候補するため悪化していた事実はあるが、Gから被告人への50万円の交付はお互いの関係改善を図るためであるというよりも、Aの選挙運動目的のためであることは優に推認できる。被告人も受取る際に「Aのことは別だ。」と発言し、Gの意図がAの当選のための票の土地まとめ等の運動の依頼であることを了解していたと言える。②被告人は、Aの選挙運動を依頼された以上Aの運動員に該当する、③被告人が起訴を免れるとの利益誘導は認められず、基礎を免れるとの期待は保護に値せず、被告人の供述以外にも十分な証拠もあるので、公訴権濫用はない。

4 コメント

  Aの配偶者であるGが直接金をばらまいたのであるから、よくよくの覚悟があってのことであろう。しかし、被告人のGに対する「Aのことは別だ。」との発言は微妙である。50万円がGと被告人のL問題で悪化した関係改善目的の金であり、被告人はその趣旨で受領したとも考えられる。本件は控訴されたはずであり、その判断が待たれる。ところで、政治家が金をやり取りするのは常識なのだろうか。派閥が金を握り、金で政治が動くところに問題がある。

判例

令和4(わ)122  公職選挙法違反被告事件
令和5年10月31日  広島地方裁判所

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