【刑事事件:平成14年中座解体工事ガス爆発事故】

1 ポイントは何か?

  本件は、演芸場として親しまれた大阪の中座の解体工事でガス爆発事故が起き、解体工事の元請け会社の従業員と、大阪ガスの下請けでガスパージ工事を請負った会社の従業員(被告人)が火傷を負い、被告人に注意義務違反があったとして、業務上失火及び業務上過失傷害で有罪となった事件である。

2 何があったか?

  B社から中座の解体工事を請負ったD社が、ガスパージ工事(配管からガスを排出する工事)をO社に発注し、O社の下請のA社が内管、C社が外管の各ガスパージ工事を担当した。

平成14年9月9日午前3時4~5分頃、C社の現場監督乙が被告人に機械室のバルブ、プラグの開栓作業を依頼した。被告人が開栓したところ、気体が押し出された。配管図に間違いがあり、押し出された気体は生ガスであった。被告人がC社の従業員丙に「押してるで。」というと、丙は「引いてるで。」と答えた。

被告人がD社の甲とともに機械室に戻ったところ、生ガスが充満しており、Dがバルブ、プラグを閉栓しようとしたが、懐中電灯を取り落として壊してしまい、暗闇の中であわててライターを点火したところ午前3時9分頃大爆発が生じた。中座の建物は倒壊し、甲と被告人が火傷を負った。中座の建物が倒壊しただけでなく法善寺横丁の建物にも被害が及んだ。

3 裁判所は何を認めたか?

  業務上失火及び業務上過失傷害で禁固1年6月、3年間執行猶予。

  注意義務違反委ついての詳細な事実認定がある。

4 コメント

  本件では建物内管末のバルブ、プラグを開ける役割が本来A社や被告人の役割ではなかったのにC社の現場監督乙から指示されたことと、ガス配管の図面が間違っていたことから、被告人にとっては生ガスが押して出ていることが信じられない気持ちで、瞬時の対応がとれなかったようである。機械室は照明設備もなく、未明のことで暗闇であり、バルブ、プラグの位置も足場が不安定であった。被告人は懐中電灯を取り落として壊してしまい、あわててライターに点火し、ガス爆発となった。

ガスは短時間で空気と混ざり合い、火気によって爆発しやすい状態になるので、少しでもガスのにおいを感じたら、直ちに対応し、通報することが不可欠である。

この被告人に対する注意義務違反の認定は厳しすぎる気もする。

判例

平成15(わ)8139  業務上失火,業務上過失傷害被告事件
平成17年3月17日  大阪地方裁判所

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