【損害賠償事件:JRの多目的トイレで死亡していた事件】

和歌山地方裁判所 令和5(ワ)380  損害賠償請求事件 令和7年2月7日判決(
棄却)


1 ポイントは何か?


多目的トイレの安全管理義務違反とその利用者の死との因果関係


2 何があったか?


JRの多目的トイレの利用者Eが同トイレ内でくも膜下出血を発症し死亡した
。その時、同トイレの在室検知センサーと呼び鈴の押しボタンが作動しない状
態であった。
Eの相続人AないしDが、JRに対し、亡Eの損害、各相続人の固有の損害及
び弁護士費用を合わせた合計金1億0742万3313円の損害賠償を請求し
た。
AないしDは、JRには亡Eの死亡の結果回避義務違反があった主張し、JR
は、同トイレの在室検知センサーと呼び鈴の押しボタンが作動していたとして
も、亡Eはくも膜下出血により死亡したのであるから、急激に体調が悪化して
死亡した可能性が高く、亡Eの死の結果を回避する可能性はなかったと主張し
た。


3 裁判所は何を認めたか?


和歌山地方裁判所は、Aらの請求を棄却する判決を下した。
JRの結果回避義務として同トイレの在室検知センサーと呼び鈴の押しボタン
が作動する状態を確保する義務があったことを認めたが、同義務違反と亡Eの
死の結果との間には相当因果関係がないとした。


4 コメント


不法行為損害賠償請求においては、被害者側に加害者の安全管理義務や相当因
果関係を立証する責任があり、本判決は、やむを得ない結論であったと思われ
る。

以上