【刑事事件:闇バイトで集められた者らによる強盗致死事件等(東京都狛江市、埼玉県草加市)】

東京地方裁判所 令和5(わ)448  住居侵入、強盗致死、偽造有印公文書行使
、強盗予備、窃盗未遂 令和6年9月6日判決


1 ポイントは何か?


闇バイトで集められた多数の被告人等による強盗致死事件等である。


2 何があったか?


被告人Aは、インターネットで闇バイトに応募し、「⑴東京都狛江市では、他
の共犯者らと共に宅配業者を装って、90歳の被害者B宅に押し入り、バール
で腹や背中を殴打して外傷性ショックで死亡させ、腕時計3個等4点(時価合
計約59万円相当)を強奪し、住居侵入、強盗致死事件を起こし、⑵東京都足
立区では強盗予備及び窃盗未遂事件を起こし、⑶石川県金沢市の石川県運転免
許センターでは、海外逃亡の準備の目的で、偽造運転免許証を見せ、偽造有印
公文書行使事件を起こした。
検察官は、懲役25年と没収を求刑した。
弁護人は、Aは、Bを足蹴りしたりバールで殴打する暴行等を予想していなか
ったので強盗のみの共犯が成立し、致死については共犯が成立していないと主
張した。被告人も。それに沿う供述をしている。


3 裁判は何を認めたか?


裁判所は、Yに対し、懲役23年に処する、未決勾留日数中330日をその刑
に算入する、 押収してあるバール1本、偽造運転免許証1通を没収するとの
実刑判決を下した。
裁判所は、Aが「詐欺ババア成敗隊」とのテレグラムのグループトークに参加
し、⑴事件で相当強度の暴行が加えられる可能性を認識していたとし、致死に
ついても共犯が成立するとした。


4 コメント


本件は凶悪犯罪であるが、刑事被告人としての人権は守られなければならない
。そこで、弁護人は、テレグラムのグループトークが、バールによる殴打を予
定していない点などを突いて弁護している。強盗致死は強盗の結果的加重犯で
あるがその結果について過失がなく予見可能性が全くないという場合にまで責
任を負わされるべきではないと考える。本裁判例もその考え方に立って、Aが
Bの死亡という結果を予見しえたかどうかを詳細に検討している。但し、バー
ルによる殴打が開始されたとき、そのまま現場に留まることは、Bの死の結果
の予見可能性につながり、致死についても共犯関係が成立したと考えられる。
闇バイトには絶対に加わってはならない。普通のバイトと思っていても、それ
が闇バイトであることに気が付いたときは、可能な限り、直ちに警察に通報し
、保護を求めるべきである。もちろん、弁護士会、法テラス、知り合いの弁護
士等に相談することをお勧めする。