【刑事事件:強盗殺人未遂の被告人がエチゾラムを服用していた事件】

前橋地方裁判所 令和5(わ)60  強盗殺人未遂
令和6年10月10日判決(懲役9年) 


1 ポイントは何か?


窃取の故意、殺人の故意、責任能力の有無。


2 何があったか?


被告人は、コーヒーマシンを置いてある店で、ーのSサイズを購入し、2杯分
のカフェラテを抽出した。それを店員に見つかって注意されると、自動車に乗
り、サイドミラーやワイパーをつかんで離そうとしない店員を振りきるために
発進させ、時速50キロメートル以上に加速して店員を振り落とし、負傷させ
た。
検察官は、強盗殺人未遂事件として起訴した。
弁護人は、被告人がマシンの操作を間違えただけで、窃取の故意はなく、店員
を自動車から振り落とそうとしたが殺意はなく、また、被告人が日ごろロレツ
が回らず、物忘れが多いなど精神障害に起因した症状がみられ、本件犯行も精
神障害の結果心神喪失状態で行ったものであり無罪であると主張した。
精神鑑定をした医師は、被告人がエチゾラム依存症候群に罹患しており、エチ
ゾラムの服用により軽度の酩酊はあったが、その影響は軽微であったとした。
エチゾラムは、抗不安、睡眠導入薬であり、大量に服用すると酩酊する。被告
人の犯行時の行動は一貫していたとする。
被告人は、500万円を被害者に支払った。


3 裁判所は何を認めたか?


裁判所は、被告人の責任能力を肯定し、懲役9年の実刑に処した。検察官の求
刑は10年であった。


4 コメント


窃盗行為に一貫性があるとしても、それだけではエチゾラム症候群の酩酊によ
る認識障害の影響により現実認識が形骸化することを否定することはできない
。鑑定医が酩酊の影響は軽微であるとした判断根拠を知りたい。