東京高等裁判所 令和5(う)1481 殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反 令和6
年10月22日判決(原審、東京地方裁判所)
1 ポイントは何か?
裁判員法50条精神鑑定
2 何があったか?
夫婦関係調停中の夫Aが妻Bを刺殺した事件で、検察官はAの完全責任能力を主
張して殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反で起訴したが、裁判員法50条精神
鑑定が実施され、その鑑定医はAには統合失調症による妄想幻聴があったと診
断した。
3 裁判所は何を認めたか?
東京地方裁判所はAが統合失調症による妄想、幻聴の圧倒的影響により本件犯
行を行ったものであり、Aは心神喪失の状態にあったと判断して、Aに無罪を言
い渡した。
東京高等裁判所は、検察官の控訴を棄却した。
裁判員法50条精神鑑定により、Aは平成30年7月頃から、Aが電子ハラスメ
ントを受けており、電子ハラスメントをする人たちからAやB、息子が殺される
との妄想を抱いており、次第にこの妄想の確信度が高まり、Aにとって、Aや
B、息子が殺されるとの危険は切迫したものとなっていき、この妄想が活発化
して統合失調症が悪化する中で、Bを殺さなければ Bや息子が拷問されて殺さ
れるという妄想が強まり、本件行為当日に「やる時間だ」という幻聴が生じて
いたと認められた。
4 コメント
病的な幻覚妄想は本人のみでなく家族にとっても重大な負担であり、いかに
して本人に病識を持たせ悪化を防ぐかが重要である。