【刑事事件:動物愛護法に違反し、犬らを虐待した事件】

横浜地方裁判所 令和5(わ)391  動物の愛護及び管理に関する法律違反被告
事件 令和6年12月25日判決

1 ポイントは何か?


➀動物虐待の有無、➁証拠動画と令状主義

2 何があったか?


Aは遺棄動物の保護、里親探し事業等行う一般社団法人であり、Bは代表理事
、C及びDはスタッフである。
検察官は、Bらは、Aの事業に関し、犬9匹の頭部等に対し、棒で突く・叩く
、足で蹴る、平手・拳で叩く等、身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え
、もって愛護動物に対し虐待を行ったとして、A及びBを動物愛護法違反で起
訴し、各罰金30万円を求刑した。
弁護人は、➀動物虐待はない、⑵証拠動画の入手が令状主義を潜脱し、違法収
集証拠であると主張した。

3 裁判所は何を認めたか?


裁判所は、A及びBを各30万円の罰金刑とし、Bが罰金を支払わない場合は
1日5000円換算で労役場留置とした。
獣医師S、訓練士T及びUから専門的知見を得た。
Sは虐待を受けたり遺棄されたりした動物が収容される施設における医療全般
も専門分野として研究し、動物の身体の構造に加え受傷に関する知見をも持つ

Tは、国内における公認訓練士制度を設けている3団体全てにおいて最高位の
訓練士の資格を取得し、50年にわたって訓練士として活動するほか、犬の訓
練所を経営して訓練士の指導にもあたっている。
Uは長年犬の訓練所を運営し、訓練士として活動している。
そして、3人は、犬の訓練士の業界では、犬を訓練するに当たって体罰は必要
なく、むしろ体罰によって悪影響が出るという考え方が一般となっており、体
罰をしてはいけないことが30年ほど前から徹底されている旨証言した。
個別に見ても次のような問題があった。
➀ゲージの中の犬に外から暴行することは、安心できるはずの場所で攻撃され
ることになるから、犬の落ち着きをなくし、攻撃性がある犬については逆に攻
撃性をあおる結果になる。
➁リードを引く程度でも吠えに対しての対処は可能で、なぜ殴られているのか
理解できていない犬に体罰の必要性も効果もない。
➂攻撃性が高く、他の方法で矯正できない犬に体罰を行う場合でも、事前に適
切な指示を出さなければ矯正する効果はない。
④反抗していないのに、訓練方法が不適切なだけの場合もある。
➄固定していない犬を上から細い棒で突くと、頭部や背骨等の命の危険のある
重要な部位を突く可能性もある。
⑥責任者がいないところで行わせている場合もある。

4コメント


犬を叱ることは小さな子供を叱るようなものだ。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人