最高裁判所第三小法廷 令和5(受)2207 損害賠償請求事件 令和7年9月9日判決 (二審大阪高等裁判所、一審京都地方裁判所)
1 ポイントは何か?
いたずらに強制執行の遅延を招く請求異義訴訟と強制執行停止決定申立が不法行為に当たる場合があるか。
2 何があったか?
AはBに対する建物明渡請求訴訟で勝訴し、明渡の強制執行を申立てたところ、BはC弁護士を代理人として請求異義訴訟を提起し、強制執行停止決定を申立てた。強制執行停止は保証金を積み立てて認められたが、請求異義訴訟は棄却され、強制執行停止決定は取消された。
そこで、AはB及びCに対し、故意または過失によりいたずらに強制執行の遅れを招いた不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起した。
3 裁判所は何を認めたか?
大阪高裁は、BのCを代理人とする請求異義も強制執行停止も、違法となるのはこれらの制度の趣旨に照らして相当性を欠く場合であり、請求異義申立の棄却や強制執行停止決定の取消しが当然にB及びCの過失を推定させるものではないとしてB及びC勝訴となった。
最高裁は、B及びCに故意過失があれば、いたずらに強制執行の遅延を招く請求異義訴訟と強制執行停止決定申立が不法行為に当たる場合があるとして高裁判決を破棄し差し戻した。
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強制執行を受ける者が、請求異義訴訟及び強制執行停止決定の制度を利用することは権利であるが、それによって強制執行をいたずらに遅らせることについて故意過失があれば不法行為による損害賠償責任を負うことになる。そのために強制執行停止決定は保証金を積むことが条件となる。弁護士が、代理人として依頼者の権利を主張することにも、このような責任が伴うこと、また、依頼人は弁護士に依頼したら弁護士の行った行為について依頼人の責任がなくなるわけでもないことにも留意すべきである。

