水戸地方裁判所 令和5(ワ)228 損害賠償請求事件 令和7年2月20日判決
1 ポイントは何か?
元暴力団員でも銀行口座開設はできるか。
2 何があったか?
元暴力団員Aは、暴力団離脱後5年経過後に、B銀行に口座を開設しようとした。
B銀行は、Aが元暴力団であることを理由に、口座開設条件として、Aに対し、一定の誓約
書の作成と、Aの勤務先Cが、安定的に働くことができる企業であることの証明を求めた。
そして、Cが人材派遣会社であり、派遣業法に違反している恐れがあるので、銀行のコン
プライアンス上、Aの口座開設を求めることはできないとし、Aに対し、Cについてのさら
なる調査を求めた。これは、警察庁の指導や日本弁護士連合会の委員会の示した基準に照
らして行われたものである。
Aは、Bに対し、さらなるCの調査と報告を拒絶し、Bの要求はAを不当に差別し、人格権
を侵害したとして金10万円の損害賠償請求をした。
3 裁判所は何を認めたか?
裁判所はBの口座開設拒否が正当であるとして、Aの請求を棄却した。
4 コメント
裁判所は、三権分立の司法機関として法律と裁判官の良心のみの基づいて判断すべきであ
る。銀行が銀行口座の開設に応じる条件として、警察庁の指導や日本弁護士連合会の委員
会が示した基準を踏まえて、口座開設者が確実に暴力団との関係を断ち切っていることや
、その勤務先がある程度継続的に安定的に勤務できる企業であることについても調査結果
を求めることは正当であると言えよう。社会から暴力団を排除するための正当な行為であ
る以上、人格権侵害の不法行為の故意過失は認められない。
