最高裁判所大法廷 平成26(オ)1023 損害賠償請求事件 平成27年12月16日判決 (原審、東京高等裁判所)
1 ポイントは何か?
夫婦同氏制(民法750条)が憲法に違反するか。
国家賠償法1条1項の「違法」とは。
2 何があったか?
上告人等(代理人榊原富士子ほか)は、国に対し、夫婦同氏制が憲法13条、14条1項、及び24条1項及び2項に違反しており、国会の立法不作為は、国賠法1条1項の違法であるとして、同法に基づく損害賠償請求をした。
3 裁判所は何を認めたか?
➀ 大法廷の結論 夫婦同氏制は憲法のいずれの規定にも違反しない。上告棄却。
以下の②は多数意見の補足、③~⑤は一部反対だが、結論は多数意見に賛成、⑥は結論においても反対する意見である。
② 裁判官寺田逸郎の補足意見 裁判所が上告人等の主張に積極的評価を与えることは難しい。国会の選択に任せることが民主主義のルールにかなう。
➂ 裁判官岡部喜代子の意見 憲法24条違反であるが、国会の立法不作為に国賠法1条1項の違法性はない。平成8年法制審議会が法務大臣に答申した「民法の一部を改正する法律案要綱」(平成8年法制審議会答申)は、国会の立法作為義務を前提としていない。結論は、上告棄却。
④ 裁判官櫻井龍子,同鬼丸かおるは,裁判官岡部喜代子の意見に同調する。
➄ 裁判官木内道祥の意見 婚姻における夫婦同氏制は憲法24条にいう個人の尊厳と両性の本質的平等に違反する。夫婦同氏に例外を認めないことに合理性はない。しかし、国会の立法不作為に国賠法1条1項の違法性はない。結論は、上告棄却。
⑥ 裁判官山浦善樹の反対意見 婚姻における夫婦同氏制は、憲法24条に違反し、平成8年法制審議会答申以降相当期間を経過した時点においては,上告人らは精神的苦痛を被ったものというべきであり、国会の立法不作為に国賠法1条1項の違法性がある。原判決破棄差戻が相当である。
4 コメント
本判決を下した最高裁大法廷の15名の最高裁裁判官の内、唯一の反対意見を書いた裁判官山浦善樹の反対意見に賛成する。最高裁は、三権分立の司法の要として、法律と良心に基づいて、徹底した憲法遵守と人権擁護の立場を明確にすることが任務であり、それが民主的ルールの実現であると考える。
