【破産事件:国家公務員の破産申立て後の退職金の4分の3を支出官が本人の同意を得て国家公務員共済組合に支払った後、本人に破産宣告が下された事件】

1 ポイントは何か?

  破産財団

退職金による返済

返済の同意

否認権の行使

2 何があったか?

国家公務員でF大学に勤務していたEは昭和61年3月29日に自己破産の申立てをし、同月31日退職した。

同日、Eは、国家公務員共済組合F大学支部長B宛に退職金β円から貸付金α円を優先弁済する旨の確約書を、F大学支出官C宛に控除依頼書をそれぞれ提出した。

CはBに、同年4月1日、国家公務員共済組合法101条2項に基づき、β円の内金γ円をα円の一部として返済した。γ円はβ円の4分の3であった。

東京地方裁判所は、同月15日、Eに対し破産宣告をし、破産管財人にAを選任した。

AがBにγ円の返還を要求した。 

3 裁判所は何を認めたか?

 ⑴ 原審東京高等裁判所

    A敗訴。

 BのCに対するγ円の支払いはEの同意の有無にかかわらず、国家公務員共済組合法101条2項により義務づけられた行為であるから、破産法72条2号(現、破産法160条1項2号)の否認の対象にならない。

 ⑵ 最高裁判所

    原判決破棄差戻し。

    原判決は国家公務員共済組合法101条2項の解釈を誤っている。同条項は、給与支給機関が組合に対する組合員の債務の弁済を代行することを規定したものにすぎない。

更に本件払込当時、CがEの支払停止や自己破産の申立の事実を知っていたか否かについて審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すのが相当である。

4 コメント

    最高裁判所の判断が妥当。

(参考) 

国家公務員共済組合法101条2項

国家公務員共済組合法 | e-Gov法令検索

破産法72条2号(現、破産法160条1項2号)

現行破産法 破産法 | e-Gov法令検索

昭和63(オ)1457  不当利得
平成2年7月19日最高裁判所第一小法廷判決〈破棄差戻〉

原審  東京高等裁判所

(裁判所HP裁判例検索より)