1 ポイントは何か?
担保不動産競売での買受申出人となる資格が破産免責を受けたうえで死亡した債務者の相続人にあるか。
2 何があったか?
横浜地方裁判所を執行裁判所とする土地・建物担保競売事件において、破産免責決定を受けた債務者Aの死亡により相続人となったBが執行官によって最高価買受価格申出人と定められたのに、執行裁判所がBは買受申出ができない債務者に当たるとして売却不許可決定をしたので、Bが執行抗告を申し立てた。
3 裁判所は何を認めたか?
⑴ 原審東京高等裁判所
B敗訴
Bは、民事執行法188条において準用する同法68条にいう買受申出ができない「債務者」に当たり、同法71条2号に掲げる売却不許可事由が存在する。
⑵ 最高裁判所
原決定を破棄し、原々決定を取り消し、横浜地方裁判所へ差戻した。
同法68条の趣旨は債務者に債務の弁済を優先させることにあり、破産免責決定を受けた以上債務の弁済を優先させる理由はない。その相続人に債務の支払い能力がなく競売事件を阻害する恐れが高いとも言えない。Bは同条に言う債務者に当たらない。
4 コメント
条文の目的を説く最高裁の判断は妥当。
(参考)
民事執行法188条において準用する法71条2号に掲げる売却不許可事由、同法188条において準用する法68条にいう「債務者」
令和3(許)7
売却不許可決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
令和3年6月21日最高裁判所第一小法廷決定(破棄自判)
原審 東京高等裁判所
(裁判所HP裁判例検索より)