1 ポイントは何か?
取締役会の承認の要否
2 何があったか?
取締役Aが会社Bに取締役会の承認なく無利子無担保で貸し付けた金銭の返還を請求した。
3 裁判所は何を認めたか?
⑴ 原審 東京高等裁判所
Aの請求を棄却した。
取締役から会社に取締役会の承認なく行われた金銭貸付は商法265条の規定に違反し無効であるとした。
⑵ 最高裁判所
A敗訴部分破棄差戻し。
商法265条は、会社と取締役個人との間の利害衝突から会社の利益を保護することをその目的とするものであるところ、取締役がその会社に 対し無利息、無担保で金員を貸付ける行為は、特段の事情のない限り会社の利益にこそなれ不利益であるとはいえないから、取締役会の承認を要しないものと解するのを相当とする。
右約定の有無について判示しない原審判決は商法265条の解釈適用を誤ったものである。
4 コメント
最高裁判所の判示に疑問。
金銭消費貸借契約は、無利息、無担保の約定があっても、期限内返済の負担は重いものであり、会社に会社と取締役個人の利害衝突の原因となりうるので、特段の事情がなくても取締役会の承認を必要とすると考えるべきではないか。
ちなみにリーマン・ショックや新型コロナウイルス・ショックから企業を守るために、国は借入れ利息と信用保証協会の保証を補助する政策をとったが、借入金が増えることで補助打ち切り後の利息金は増える。それでは救済策として不十分であると感じた中小企業は多いと思う。無利息、無担保だったらよいとは、必ずしも言えないのである。
参考 商法265条は、現在削除済み
現、会社法356条1項2号、365条
以上
貸金返還請求
最高裁判所第二小法廷 昭和38年12月6日判決(上告人敗訴部分破棄差戻)
民集 第17巻12号1664頁
原審 東京高等裁判所