【他人物売買:他人の土地を売り代金を受け取った事件】

1 ポイントは何か?

  詐欺被害は代金のみか転売利益の期待権にも及ぶか?

  他人物売買は有効か?

2 何があったか? 

  DはAに、F所有名義だが、E(真の所有者)がFに対する処分禁止仮処分を得て係争中の土地を、係争中であることを隠して売り、AからDに代金76万円を受領し、FからAに所有権移転登記をした。その後EがFに勝訴し、仮処分後の登記はすべて取り消された。 

3 裁判所は何を認めたか?

 ⑴ 原審 東京高裁

 AのDに対する欺罔行為による不法行為損害賠償請求権としては本件の場合代金相当分のみ認め、売買契約の不履行に基づく損害賠償請求権はそもそも他人物の売買であり履行不能の契約であるとして棄却した。

 ⑵ 最高裁判所

   原審高裁が、欺罔行為に基づく損害は代金相当額にとどまるとした点は認め、第三者所有物売買は有効に成立し、損害は代金分のみにとどまらず転売利益の期待権にも及ぶ場合もあるとして、Eが絶対に売らない意思を有していたか、DがEから買い取る努力をしたかなど審理を尽くさせるため原判決破棄差戻しの判決を下した。 

4 コメント

  ある損害が不法行為に基づくと同時に契約の債務不履行に基づく場合がある。

不法行為や契約の債務不履行に基づく損害賠償請求については経緯を丹念に調べそれぞれの要件を抽出し、損害はどこまで請求できるかも調べなければならない。

判例

昭和49(オ)314  損害賠償請求
昭和50年12月25日  最高裁判所第一小法廷  判決  その他

原審 東京高等裁判所

不動産問題でお困りの方

不動産問題に直面している方、相続をきっかけに生じた不動産の問題、また、共有名義となっている不動産に関する複雑なトラブル。これらの課題は、専門的な知識と経験が求められることが多いです。相続における不動産の取り扱いや、共有名義の不動産問題の解決策など、川崎市の恵崎法律事務所にご相談ください。