【不服申立不可の事件:逃亡犯罪人引渡法に基づく仮拘禁許可状に対する特別抗告はできないとされた事件】1

1 ポイントは何か?

  憲法34条は抑留・拘禁に対する人権を定めている。国際刑事裁判所協力法(平成19年法律37号)34条、35条に定めがある仮拘禁許可状とは、法務大臣が外務大臣から要請を受けた時に東京高等検察庁から申立てて東京高等裁判所が決定を下すものであり、不服申立の規定はないが刑事訴訟法433条の特別抗告の規定を準用して刑事訴訟法上の特別抗告を許さなくても憲法34条には違反しないとした。

2 何があったか? 

  外国との犯罪人引渡条約に基づいて国際刑事裁判所の仮逮捕の対象となった者に対し、東京高等裁判所が仮拘禁許可状の発布を決定した。

  対象となった者から刑事訴訟法433条の特別抗告の規定を準用して刑事訴訟法上の特別抗告の申立が行われた。 

3 裁判所は何を認めたか?

  特別抗告の申立は却下された。 

「本件発付は、逃亡犯罪人引渡法に基づき東京高等裁判所裁判官が行った特別の行為であって、刑訴法上の決定又は命令でないばかりか、逃亡犯罪人引渡法には、これに対し不服申立てを認める規定が置かれていないのであるから、 本件発付に対しては不服申立てをすることは許されないと解すべきであり、したがって、本件申立ては不適法である。また、本件発付の性質に鑑みると、このように解しても憲法34条に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判例(※後掲①昭和22年(れ)第43号同23年3月10日判決・刑集2巻3号175頁、②昭和26年(ク)第109号同35年7月6日決定・民集14巻9号1657頁、③昭和36年(ク)第419号同40年6月30日決定・民集19巻4号1089頁、④昭和37年(ク)第243号同40年6月30日決定・民集19巻4号1114頁、⑤昭和39年(ク)第114号同41年3月2日決定・民集20巻3号360頁、⑥昭和37年(ク)第64号同41年12月27日決定・民集20巻10号2279頁、⑦昭和42年(し)第78号同44年12月3日決定・刑集23巻12号1525頁、⑧昭和41年(ク)第402号同45年6月24日決定・民集24巻6号610頁、⑨昭和40年(ク)第464号同45年12月16日決定・民集24巻13号2099頁)の趣旨に徴して明らかである(⑩最高裁平成2年(し)第52号同年4月24日第一小法廷決定・刑集44巻3号301頁、⑪最高裁平成6年(し)第111号同年7月18日第一小法廷決定・裁判集刑事263号891頁、⑫最高裁平成26年(行ト)第55号同年8月19日第二小法廷決定・裁判集民事247号147頁、⑬最高裁令和元年(し)第699号同年11月12日第二小法廷決定・裁判集刑事327号1頁参照)。」

これは最高裁大法廷の裁判官全員一致の決定である。

4 コメント

  これは異論のない確定的判例であるが、しかし、もし明らかに不正な手続きで発布されるなどの憲法上見逃せない人権侵害があった場合には、刑事訴訟法433条の特別抗告の規定を準用して刑事訴訟法上の特別抗告が認められる余地はあるだろう。

判例

令和5(し)735  仮拘禁許可状の発付に対する特別抗告事件

令和5年11月6日  最高裁判所第二小法廷  決定  棄却

刑事事件でお困りの方

被害届・刑事告訴を考えている方、犯罪者と間違われて困っている方、逮捕拘留されて困っている状況の方、また示談を希望している方に対して、弁護士は不可欠です。被害者とのコミュニケーション、無実を証明するための証拠収集、捜査機関との対応、そして示談交渉のサポートなど、川崎市の恵崎法律事務所が多岐にわたる問題を解決します。刑事事件に関するお悩みや疑問がございましたら、お気軽にご相談ください。