1 ポイントは何か?
石綿粉じん暴露により石綿肺、肺がん、中皮腫等が発症しうるとの知見は昭和48年ころまでには国際機関等により公表されていた。本件では、建物解体作業に従事した者らと建材メーカーとの間で、建物建材メーカーが石綿含有建材を販売するとき、解体作業に従事する者に対する警告情報を表示する義務があったかが争われ、最高裁は否定した。
2 何があったか?
建物解体作業に従事し、建材に含まれていた石綿の粉じんを浴びて石綿肺等になった者やその相続人らが石綿を含んだ建材を販売した建材メーカーには警告情報を表示する義務があったのに怠ったとして損害賠償請求をした。
3 裁判所は何を認めたか?
石綿粉じん暴露被害者らが敗訴。
建材メーカーには、解体作業に従事する者に対する警告情報を表示すべき注意義務はない。
建材メーカーが警告情報を表示しても実現性、実効性に乏しい。むしろ、建物解体事業者が、その知見に基づいて注意すべきである。
なお、建材メーカーが建設作業に従事する者に対する警告情報の表示義務は否定されない。
4 コメント
最高裁判所は、建物解体作業従事者に対する石綿暴露被害の警告情報の表示義務がないから、そんなことはしなくてよいと言っているわけではない。できる限りやった方がよい。
判例
令和3(受)1125 損害賠償請求事件
令和4年6月3日 最高裁判所第二小法廷 判決 その他 東京高等裁判所