1 ポイントは何か?
平成22年ころ、鳴門市の競艇場を経営する公営企業の臨時従事員が離職するとき、公営企業の共済会が離職餞別金を支払っていた。その財源は鳴門市から共済会に対する補助金交付であったが、同年の補助金交付について、鳴門市の住民らが、住民訴訟を提起した。これに対し、最高裁判所は、住民らの請求を一部認めた。
2 何があったか?
平成22年頃、鳴門市では、公営企業の臨時従事員が離職するとき、公営企業の従事員が加入する共済会が離職餞別金を支払っていた。その財源は鳴門市からの補助金交付で、鳴門市は毎年予算措置を講じて共済会にその補助金を交付していた。
鳴門市の住民Ⅹらが、地方自治法242所第1項の住民訴訟により、同市の同共済会への補助金交付には条例上の根拠がなく違法であるとして、住民訴訟提起時の現鳴門市長Y1を被告としてY1から平成22年当時の同市長Bに対し鳴門市への損害賠償金の支払を請求するよう求め、同様に現鳴門市公営企業局長Y2を被告としてY2から平成22年当時の同公営企業局長C及び同次長Aらに対し、鳴門市への損害賠償金の支払を請求するよう求める訴訟を提起した。Aについては、Cの補助者として、Cによる補助金交付決定に関与した点と、同決定を回避させなかった点を選択的に主張した。
3 裁判所は何を認めたか?
高松高等裁判所は、住民Ⅹらの訴えを認めた。
しかし、最高裁判所は、Y2からCに対し損害賠償を請求するよう請求する訴えのみを認め、その他の請求については高松事等裁判所の判決を破棄した上で、却下ないし棄却した。
Y1が被告の訴訟では、補助金交付決定権がCにありBには一般的監督権限もなかったと認定し棄却となった。
Y2が被告でAがCの補助者として補助金交付決定に関与したことは住民訴訟の対象にならないとして却下し、Cの決定を回避させる義務までは認めず、それを理由とする請求は棄却となった。
4 コメント
公営企業法の解釈上、市長の最終的責任は問題とならないのか、疑問を感じる。
そして、競艇場の臨時職員たちの労働条件はどうなったのか。当然ながら、離職餞別金を貰えなくなったのだろうか。現在、同一労働同一賃金の原則は守られているのか。
判例
平成29(行ヒ)423 鳴門市競艇従事員共済会への補助金違法支出損害賠償等請求事件
令和元年10月17日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 高松高等裁判所
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