1 ポイントは何か?
「疑わしきは被告人の利益に」が刑事裁判の鉄則である。本件は、現住建造物放火で起訴された被告人が、状況証拠から犯人であると断定するには合理的疑いが残り、しかも新たな証拠が出てくるとも考えられないとして無罪判決が下された事件である。
2 何があったか?
Aが家族も住む自宅に放火したとして、起訴された。
状況から考えて、放火であることは間違いない。天井が50平方センチメートル燃えて消化されているので既遂である。もしAが放火したとしたら、最近、A宅の近辺で起こっていた不審火の放火犯人がAではないかおいう風評が広まっていたことから、Aがその風評被害を打つ消すためにしたのではないかという、動機も考えられないではない。しかし、確実な直接証拠は存在しない。それでも、検察官は、状況証拠を論理的に検討し、消去法でAの外に犯人はいないとした。
3 裁判所は何を認めたか?
Aは無罪。
Aが犯人と断定するには合理的疑いが残る。今後新たな証拠が出てくる可能性も低い。
4 コメント
最高裁は、Aが真犯人であると考える余地もあるとする。しかし、「疑わしきは被告人の有利に」である。
判例
昭和45(あ)66 現住建造物等放火
昭和48年12月13日 最高裁判所第一小法廷 判決(無罪)
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