1 ポイントは何か?
本件は「消費者契約法」上の「特定適格消費者団体」による「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」に基づく「共通義務確認の訴え」である。同訴えについては、請求を認める判決を下しても、それを前提として個別の対象消費者が提起する財産的被害を確定するための簡易確定手続が困難な場合は認められない。その「困難な場合」とは。
2 何があったか?
株式会社Y(以下、「Y」)は、ウェブサイトで「仮想通貨バイブルDVD5巻セット」等を販売した。最初のセットは約5万円、次の「VIPクラスセット」は約10万円、その次の「パルテノンセット」は約50万円であった。その宣伝には、「確実に」、「早く」、「億万長者」などの誇大で断定的な文句が羅列されていた。購入者は、最初のセットが約4000人、次のセットが約1500人、その次のセットが約1200人であった。
特定消費者団体X(以下「X」)は、Yらが本件対象消費者に対して商品売買代金相当額の損害賠償義務を負うべきことの共通義務の確認を求める訴えを提起した。
3 裁判所は何を認めたか?
⑴ 原審東京高等裁判所 X敗訴。
Xの請求を認めても、対象消費者ごとに知識、経験、事情等が異なり、過失相殺の割合や因果関係の存否等も異なるから、各対象債権の存否および内容を簡易確定手続で適切、迅速に判断することは困難である。
⑵ 最高裁判所 X勝訴。(原判決破棄。第1審裁判所に差し戻しの判決)
各対象消費者がウェブサイトに掲載された説明を受けて本件各商品を購入したという主要な経緯は共通しているので、対象消費者ごとの投資の知識や程度を考慮する必要性が高いとはいえない。
過失相殺や因果関係については、簡易確定手続を行う裁判所が適切な審理運営上の工夫をすることもかなえられる。
4 コメント
訴状の印紙代は、共通義務確認請求事件(第1審)が13000円、簡易確定手続の申立が1000円、債権届出は債権1件につき1000円で、ほかに切手が必要。
以上
判例
令和4(受)1041 共通義務確認請求事件
最高裁判所第三小法廷 令和6年3月12日判決(破棄自判)
(第1審東京地方裁判所、原審東京高等裁判所)