【税金事件:固定資産税評価基準を争った事件(広島)】

令和5(行ヒ)207  固定資産価格審査決定取消請求事件
令和7年2月17日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  広島高等裁判


1 ポイントは何か?


増築された高層建物の固定資産税評価額の定め方。


2 何があったか?


Aが所有する本件家屋は、平成5年に新築され、平成18年に増築された地下
2階、地上23階建ての非木造家屋である。広島市長は、本件家屋につき、平
成30年3月30日、本件家屋の平成30年度の価格を18億1743万
9165円(以下「本件登録価格」という。)と決定し、同年4月2日、これ
を家屋課税台帳に登録した。
Aは、本件建物の増築前既存部分については、S造(骨格材の肉厚が4㎜を超
えるもの)が床面積の90パーセントを占めており、それに応じた経年減点補
正率を適用すべきであり、残りの10パーセントに過ぎないSRC造等経年減
点補正率を適用してされた本件登録価格の決定は違法であると主張した。
広島市固定資産評価審査委員会は、Aの審査の申出を棄却する決定をした。


3 裁判所は何を認めたか?


広島高等裁判所は、Aの主張を認め、S造に基づく経年減点補正率を適用た
14億1992万2257円を超える部分は違法であるとした。
最高裁判所二小は、これを覆し、SRC造の部分は建物全体を支える基底部分
であるから、その補正率を用いたことは不合理・不平等であるとは言えないと
した。
草野耕一裁判官の少数意見があり、補正率が最も厳しい低階層補正率を基準と
することは納税者に対してドラコニアンであるという。


4 コメント


私は、地方自治の本旨から考えて、敢えて広島市長の決定した固定資産税評価
額を違法とはしない最高裁二小の判決を支持する。そして広島市長と議会の間
での政治的解決において、広島高裁の判決と草野判事の少数意見(ドラコニア
ンとは面白い。)は十分に考慮すべきであると思う。このような回り道は時間
がかかるが、それが民主主義であると思う。