平成26(し)538 勾留取消し請求却下の裁判に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事
件
平成26年11月28日 最高裁判所第二小法廷 決定 棄却 神戸地方裁判所
平成22年(し)第 号
1 ポイントは何か?
準抗告の取下の効果はいつ発生するか。
2 何があったか?
Aは犯罪者として逮捕勾留され、B地方裁判所に起訴された。Aはもはや自分
を勾留する理由がなくなったとしてB地方裁判所に勾留取消を請求した。しか
しB地方裁判所はAの勾留の理由はまだなくならないとして勾留取消請求の棄
却決定をした。そこでAはこの決定に不服であるとしてC高等裁判所に対し準
抗告の申立てをした(刑事訴訟法429条)。C高等裁判所もAの勾留の理由
はなくならないとして準抗告棄却の決定をした。そこでAは最高裁判所に特別
抗告をした。
ところが、AはC高等裁判所が準抗告の棄却決定をする前に準抗告の取下書を
D拘置所の職員に手渡しており、D拘置所の職員の手違いでC高等裁判所にそ
れが届けられたのは準抗告棄却決定の後であった。Aの準抗告の取下げは有効
か。
3 裁判所は何を認めたか?
最高裁判所は、拘置所ではタイムラグが発生する恐れがあるので、被疑者が拘
置所の長ないし代理の職員に準抗告の取下書を渡した時に裁判所に提出したと
同じ効果が発生するとして、Aが拘置所の職員に準抗告の取下書を渡した時に
C高等裁判所における準抗告の手続きは終了したとして、Aの最高裁判所に対
する特別抗告を却下した。
4 コメント
裁判所が勾留取消請求を棄却する決定をした時は、不服申立の方法として準抗
告ができる(刑事訴訟法429条)。しかし、被告人は、あとで考え直して準
抗告を取下げることもできる。被告人がその書類を拘置所の職員に渡したら、
そのとき裁判所にその書類が届いたと同じ効果が発生し、その時点で手続は終
了する。その書類が裁判所に届けられるのが遅れても変わらない。準抗告棄却
を前提とする特別抗告もできなくなり却下となった。
残った疑問は、
1 C高等裁判所の準抗告棄却決定が形式上残るのもおかしいから、最高裁
判所はAの特別抗告の却下だけでなく、C高等裁判所の準抗告棄却決定を
破棄し、準抗告の終了宣言をすべきだったのではないか。
2 もし、D拘置所がうっかりしてC高等裁判所に準抗告取下書を送らず誤
って廃棄したとしたら、そして最高裁もそれに気が付かずに特別抗告を認
め勾留取消の決定を下していたら、またそのままAが釈放されたとしたら
、Aを勾留で再収用するにはどういう手続きをするのだろう。